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多発性硬化症(MS)/視神経脊髄炎(NMO)

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疾患概要

多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)は、脳や脊髄の神経をおおっているカバーが壊れる病気です。この病気は若い人や女性に多く、ある日突然、目が見えにくくなったり、手足がしびれて動きにくくなったり、おしっこが出にくくなったり、といった発作が起こり、再発をくりかえす難病です。とても心配な病気ですが、診断方法や治療方法はどんどん進歩しており、私たちのように多発性硬化症/視神経脊髄炎を専門とし治療経験も豊富な神経内科医を受診して、ご相談いただければと思います。

治療法・対処法

多発性硬化症(MS)/視神経脊髄炎(NMO)の診療
患者さんお一人お一人の再発の特徴に応じて治療薬の種類や量を決める、オーダーメイドの治療を心がけています。再発した場合には、できるだけ早く入院治療が始められるように努力しています。当院では過去20年間で約400人の患者さんが入院治療を受けました。また、各種治療薬の治験や市販後調査を行うことで、新薬をいち早く患者さんに届けられるよう協力しています。
療養のお手伝い
患者さんが多発性硬化症/視神経脊髄炎とうまくつきあっていけるよう、いつも一緒に考えていきたいと思っております。その一環として、全国各地の患者団体や保健所が主催する講演会の講師を務めさせていただいています。
また、多摩地区にお住まいの重症の指定難病患者さんについては、患者支援センター(地域療養支援室・医療相談室)と連携して療養支援や訪問診療を行っています。
研究活動
院内での臨床研究と、東京都医学総合研究所との共同研究を行っています。2007年には、視神経脊髄炎の患者さんに、多発性硬化症の治療薬であるインターフェロンを使うと、病気が逆に悪化したり、ひどい副作用が起きたりすることを、世界で初めて報告しました(文献1)。この論文は、5年間で80回ほど他の論文に引用され、J Neurol Sci 誌の「最も引用された論文ランキング」で上位に入賞しました。2011年には、多発性硬化症になりそうだけれども、まだなっていない患者さんに、あらかじめインターフェロン治療をすることで発病を遅らせる効果があることを、 アジアで初めて報告しました(文献2)。2015年には、「視神経脊髄炎は、再発しては落ち着くこと(再発寛解)を一生くり返すものであり、じわじわと進行していくことはない」という世界の常識をくつがえし、炎症の燃え方が激しい場合には、視神経脊髄炎が進行型になる可能性があることを初めて報告しました(文献3)。このように、当院の患者の皆さまの研究へのご理解ご協力のおかげで、数多くの研究成果を世界に向けて発表しています。
  • 文献1:Warabi Y: J Neurol Sci, 252: 57-61, 2007.
  • 文献2:蕨陽子:新薬と臨床, 60: 766-771, 2011.
  • 文献3:Warabi Y: Mult Scler, 21:1872-1875, 2015.

患者さんへのワンポイントアドバイス

入門書のご案内
多発性硬化症/視神経脊髄炎という診断を受けても、どんな病気なのか、これからどうしたらよいのか、よくわからず不安にお思いになる方が多いと思います。それに応えるため、2015年12月に、福冨崇史著、蕨陽子監修の「患者自身が書いた 多発性硬化症1年生のためのMS入門書」(発行所 ブイツーソリューション)が自費出版されました。多発性硬化症/視神経脊髄炎の医学的知識や利用できる制度、信頼できる民間団体やホームページの紹介などが掲載されていますので、皆さまにお読みいただき、お役立ていただければ幸いです。
再発かな?と思ったら
多発性硬化症も視神経脊髄炎も、すぐに命に関わる病気ではありませんので、「再発かな?」と思っても、一刻を争って救急車を呼んだり、夜中に受診したりする必要はありません。たとえ再発しても、ご自身の回復力で自然に治ることもありますので、少し様子をみてみましょう。目安として、3日目になっても症状が悪くなり続ける時は、主治医に連絡してください。ただし、目が見えなくなった時、歩けなくなった時、おしっこが出なくなった時は、様子を見ず、早目に連絡してください。また、視神経脊髄炎は、多発性硬化症に比べて早めにステロイドパルス療法を行った方がよい場合もあります。「視神経脊髄炎の再発かな?」と思ったら、診療時間内になるべく早く主治医にご相談ください。

当科の専門医

蕨 陽子(神経内科専門医・総合内科専門医)を中心に、当科所属のすべての脳神経内科医が、外来および入院で多発性硬化症/視神経脊髄炎を診療しています。

疾患概要・病態

多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMOSD)は、脳・視神経・脊髄の神経をおおっているカバー(髄鞘)が壊れる病気(脱髄疾患)です。この病気は、ある日突然、目が見えにくくなったり、手足がしびれて動きにくくなったり、おしっこが出にくくなったり、といった発作が起こり、再発をくりかえす指定難病です。当院では過去20年間で約400人の患者さんが入院治療を受けています。
欧米の白人に多いタイプが「多発性硬化症(MS)」で、おおむね30代までの方が、上記のような自覚症状を呈した際に脳のMRI検査をしてみると、多数の大脳白質病変が見つかることがあります。そのような場合には、当科へご紹介いただくことをお勧めいたします。
一方、日本人には、重症な視神経炎と脊髄炎を繰り返して失明したり車いす生活になったりする患者さん達が数多くいることがわかっており、「視神経脊髄型MS」と呼んで研究がなされてきました。2004年に視神経脊髄型MS患者さんの血清中に特異的な抗体が発見され、後にそれが「抗アクアポリン4抗体」であることがわかり、このような患者さん達は「視神経脊髄炎(NMOSD)」と呼ばれるようになりました。視神経脊髄炎は女性に多く、小児から80代まで幅広い世代に発病します。失明、両足のマヒ(対麻痺)、尿閉など、視神経と脊髄に特徴的な症状をご覧になった場合には、当科へのご紹介をご検討ください。

治療・最近の動向

多発性硬化症(MS)には、「疾患修飾薬」と呼ばれる効果の高い治療薬が、毎年のように新発売される時代になっています。2015年末時点で、第一選択薬はインターフェロン・ベータ1bと、インターフェロン・ベータ1a、グラチラマー酢酸塩、第二選択薬はフィンゴリモドとナタリズマブです。患者の皆さまには、指定難病であっても治療薬があることに、ひとまず安心してもらってよいでしょう。しかし、日本人の脱髄疾患の診療には独特の難しさが伴います。その理由の一つは、日本人には多発性硬化症と視神経脊髄炎が混在しており、さらにその二つにはっきりと分類できないタイプの患者さんも多くいて、診断およびタイプ分けが大変難しいからです。二つ目には、私共が2007年に世界で初めて発表したとおり、多発性硬化症の疾患修飾薬を視神経脊髄炎の患者さんに用いると危険であることがわかっているからです。そのため、正確な診断およびタイプ分けに基づいて適切な治療を行うことが非常に重要です。この点に関しましては、多くの症例を経験している私共に一度ご相談くだされば、ご助言ができるものと存じます。外来受診でのご相談に加えて、4日間程の検査入院が可能でしたら、当方でさらに詳しい検査を行って病気のタイプを判定し、最適な治療方針をご提案したいと思います。また、上記の治療薬の導入手順に面倒さを感じる先生方も多いかと思いますので、治療導入期だけの受診もお受けできます。神経病院は入院専門病院であることから、入院での治療導入を基本としておりますが、表1にお示しするような目安で、できるだけ患者さんの負担が軽く導入できるようにと工夫しています。さらに、若い女性に多い疾患であることから、妊娠・出産を含む女性患者さん特有の心配事に関しても、当科の女性医師がご相談に乗っております。

表1 検査と治療導入にかかる日数の目安
タイプ分けのための検査入院 4日間の入院
ベタフェロンの導入 5日間の入院
アボネックスの導入 3週に1回、2ヶ月間の外来通院
ジレニアの導入 2日間の入院導入。3か月後まで月1回の外来通院。
タイサブリの導入 3か月目までは3日間の入院。4か月以降は日帰り入院。
コパキソンの導入 3日間の入院

視神経脊髄炎(NMOSD)の治療は今も、古くから使われてきたステロイドや免疫抑制剤、血漿交換などが主体です。抗アクアポリン4抗体が測定できるようになってから診断が明確になり、治療のさじ加減が以前よりもわかるようになってきました。それにより、以前のように失明したり車いす生活になったりする患者さんが少しでも減るよう、日々努力を続けています。
なお、多摩地区にお住まいの重症の指定難病患者さんについては、患者支援センター(地域療養支援室・医療相談室)と連携して、療養支援や訪問診療を行うこともできます。また、患者さんが多発性硬化症/視神経脊髄炎とうまくつきあっていけるよう、いつも一緒に考えていきたいと思っており、全国各地の患者団体や保健所が主催する講演会などで、講師を務めさせていただいています。

当院で行っている臨床研究・実績など

研究活動
院内での臨床研究と、東京都医学総合研究所との共同研究を行っています。2007年には、視神経脊髄炎の患者さんに、多発性硬化症の治療薬であるインターフェロンを使うと、病気が逆に悪化したり、ひどい副作用が起きたりすることを、世界で初めて報告しました(文献1)。この論文は、5年間で80回ほど他の論文に引用され、J Neurol Sci 誌の「最も引用された論文ランキング」で上位に入賞し、現在まで160回以上引用され続けているだけでなく、すでに教科書的な常識になっています。2011年には、多発性硬化症になりそうだけれども、まだなっていない患者さんに、あらかじめインターフェロン治療をすることで発病を遅らせる効果があることを、アジアで初めて報告しました(文献2)。2015年には、「視神経脊髄炎は、再発しては落ち着くこと(再発寛解)を一生くり返すものであり、じわじわと進行していくことはない」という世界の常識をくつがえし、炎症の燃え方が激しい場合には、視神経脊髄炎が進行型になる可能性があることを初めて報告しました(文献3)。この論文は、多発性硬化症/視神経脊髄炎の専門誌に驚きを持ってアクセプトされ、専門家の論評が付いた形で掲載されました。このように、当院の患者の皆さまの研究へのご理解ご協力のおかげで、数多くの研究成果を世界に向けて発表しています。
  • 文献1:Warabi Y, et al: J Neurol Sci, 252: 57-61, 2007.
  • 文献2:蕨陽子, et al:新薬と臨床, 60: 766-771, 2011.
  • 文献3:Warabi Y, et al: Mult Scler, 21:1872-1875, 2015.
教育活動
多発性硬化症/視神経脊髄炎の基本的な診療に関する指導に加え、新規の疾患修飾薬や免疫抑制剤、血漿交換といった特殊な治療が多い疾患であるため、看護科や薬剤科とも連携しながら、きめ細かな研修医指導を行っています。研修医を含む有志の若手医師の方々には毎年、国際学会 PACTRIMS でのポスター発表を指導し、帰国後は論文執筆指導を行って実を結んでいます(文献4~8)。免疫性神経疾患の臨床に興味を持つ神経内科の若手医師の皆さまの研修先として、当院をお選びいただければ大変光栄に存じます。
また、医療職の方向けに、神経難病看護(エキスパートナース)研修やリハビリテーション研修会などでも講義をしておりますので、その際には院外からのご聴講をお待ちしています。
  • 文献4:Mukai M, Warabi Y, et al: Clin Exp Neuroimmunol, 5: 227–9, 2014. (Cover Image にも採用されました)
  • 文献5: Bokuda K, Warabi Y, et al: Clin Exp Neuroimmunol, 5: 380–2, 2014.
  • 文献6:Warabi Y, Yamazaki M, et al: Biomed Res Int, 2013: 847670, 2013.
  • 文献7: Tamura S, Warabi Y, et al: J Clin Pharm Ther, 37: 724-5, 2012.
  • 文献8: Kitazawa Y, Warabi Y, et al: Intern Med, 51: 103-7, 2012.
入門書のご案内
多発性硬化症/視神経脊髄炎という診断を受けても、どんな病気なのか、これからどうしたらよいのか、よくわからず不安にお思いになる方が多いと思います。それに応えるため、2015年12月に、福冨崇史著、蕨陽子監修の「患者自身が書いた 多発性硬化症1年生のためのMS入門書」(発行所 ブイツーソリューション)が自費出版されました。多発性硬化症/視神経脊髄炎の医学的知識や利用できる制度、信頼できる民間団体やホームページの紹介などが掲載されていますので、多くの皆さまにお読みいただき、お役立ていただければ幸いです。

最終更新日:2016年3月29日

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