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脊髄動静脈奇形

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疾患概要

脊髄動静脈奇形
医学教科書から引用 Spetzler RF. J Neurosurg. 2002

脊髄動静脈奇形とは、背骨の中の神経の血管にできる病気の一つです。動脈と静脈との間が異常につながっている病気で、異常なつながりのことを動静脈奇形(どうじょうみゃくきけい)、または、動静脈ろうと呼びます。発生部位により、おもに4種類に分けられます(表5)。一番多いのは、硬膜動静脈ろうです。
原因は、はっきり分かっていませんが、若くして発症する先天的なタイプと高齢になってから発症する後天的なタイプがあることが知られています。
脊髄動静脈奇形はまれな病気です。手術治療が必要な患者さんは、400,000人に1人くらいの割合で、日本全国で年間300件程度の手術が行われています。この分野の手術は、骨よりも小さい神経を取り扱うため、整形外科ではほとんど行われておらず、脳神経外科が得意な分野です。

表5 脊髄動静脈奇形の種類
タイプ部位
硬膜 動静脈ろう
(こうまくどうじょうみゃくろう)
神経をおおう硬膜
脊髄 辺縁部動静脈ろう
(へんえんぶどうじょうみゃくろう)
神経の表面
脊髄 髄内動静脈奇形
(ずいないどうじょうみゃくきけい)
神経の中
脊髄 硬膜外動静脈ろう
(こうまくがいどうじょうみゃくろう)
神経をおおう硬膜の外

症状

脊髄動静脈奇形によって、神経の血液の流れが悪くなると、足の筋力低下・しびれやトイレの症状がでることが多いです。これらの症状は、月の単位で、時間経過とともに悪化します。また、その他、急な出血症状が出ることがあります(表6)。脊髄辺縁部動静脈ろう(へんえんぶどうじょうみゃくろう)・脊髄髄内動静脈奇形(ずいないどうじょうみゃくきけい)では、急に出血が起きて、くも膜下出血や脊髄内出血となり、強い頚部痛・背部痛・腰痛がでることがあります。

表6 脊髄動静脈奇形の症状
タイプゆっくり進む症状急な症状(出血)
硬膜 動静脈ろう 足の筋力低下・しびれ
トイレの症状など
出血はまれ
脊髄 辺縁部動静脈ろう 同上 くも膜下出血
脊髄 髄内動静脈奇形 同上 脊髄内出血
脊髄 硬膜外動静脈ろう 同上 出血はまれ

治療法・対処法

全身麻酔を用いて痛みのない状態で、手術を行います。手術は9割以上後ろから行います。まれに側方や前方から行うこともあります。正中の皮膚を切り、筋肉をこわさない様にしてはがしてよけます。背骨の一部を手術用ドリルで削り取り窓を開けて動静脈奇形に到達します。手術用の顕微鏡下に異常な血流を遮断します。また、直達手術以外の治療法としてカテーテル手術があります。動静脈奇形のタイプによって、最適な治療を選択します(表7)。
8-9割の患者さんは手術後2週間くらいで体調が回復します。ごくまれに、術後に症状が悪化することもあります。手術前の神経の圧迫の程度や、動静脈奇形の種類によっても回復に個人差があります。術後の回復程度により、早期退院かリハビリを行っています。

表7 脊髄動静脈奇形の治療法
タイプ直達手術カテーテル手術
硬膜 動静脈ろう ◎ 根治可能 ○ 根治可能(再発多い)
脊髄 辺縁部動静脈ろう ○ 根治可能 ○ 根治可能
脊髄 髄内動静脈奇形 △ 治療が難しい △ 治療が難しい
脊髄 硬膜外動静脈ろう ○ 根治可能 ◎ 根治可能

患者さんへのワンポイントアドバイス

この病気により両足の筋力低下がおこると転びやすくなります。転んで頭を強く打ったり、尻もちをついたりすると、大怪我をして、神経が強く圧迫され病気が悪化することがあります。特に、自宅内では夜間にトイレに行くときには注意することが必要です。また、大雨や雪など天気が悪いときの外出は特に注意が必要となります。

当科の専門医

髙井敬介(日本脊髄外科学会指導医95)

疾患概要・病態

脊髄動静脈奇形とは、脊髄や神経根の血管に発症する疾患の一つです。動脈と静脈との間に異常なシャントを認め、シャントのことを動静脈奇形(どうじょうみゃくきけい)、または、動静脈ろうと呼びます。発生部位により主に4種類に分けられます(表5, 文献1-4)。一番多いのは、硬膜動静脈ろうです。
原因は、はっきり分かっていませんが、若くして発症する先天的なタイプと高齢になってから発症する後天的なタイプがあることが知られています。
脊髄動静脈奇形はまれな病気です。手術治療が必要な患者さんは、400,000人に1人くらいの割合で、日本全国で年間300件程度の手術が行われています。この分野の手術は、脊椎の深部で、極めて細い脊髄や神経根の血管を取り扱うため、整形外科では行われていません。脳神経外科が得意な分野ですが、脊椎手術と血管障害手術の両方の技術を必要とするため、治療可能な施設が限られています。

表5 脊髄動静脈奇形の種類
タイプ部位
硬膜 動静脈ろう
(こうまくどうじょうみゃくろう)
神経をおおう硬膜
脊髄 辺縁部動静脈ろう
(へんえんぶどうじょうみゃくろう)
神経の表面
脊髄 髄内動静脈奇形
(ずいないどうじょうみゃくきけい)
神経の中
脊髄 硬膜外動静脈ろう
(こうまくがいどうじょうみゃくろう)
神経をおおう硬膜の外

症状

脊髄動静脈シャントによって、動脈血が逆流すると、脊髄の循環障害がおき、対麻痺や膀胱直腸障害が出現します。これらの症状は月の単位で、時間経過とともに悪化します。また、急な出血症状が出現することがあります(表6)。脊髄辺縁部動静脈ろう・脊髄髄内動静脈奇形では、急に出血が起きて、くも膜下出血や脊髄内出血となり、強い頚部痛・背部痛・腰痛がでることがあります。

表6 脊髄動静脈奇形の症状
タイプ慢性症状急性症状(出血)
硬膜 動静脈ろう 痙性対麻痺・しびれ
膀胱直腸障害など
出血はまれ
脊髄 辺縁部動静脈ろう 同上 くも膜下出血
脊髄 髄内動静脈奇形 同上 脊髄内出血
脊髄 硬膜外動静脈ろう 同上 出血はまれ

治療・最近の動向

脊髄動静脈奇形に対しては、椎弓形成術、椎弓切除術によって術野を展開して、手術顕微鏡下に動静脈シャントを遮断します。また、直達手術以外の治療法としてカテーテル手術があります。動静脈奇形のタイプによって、最適な治療を選択します(表7)。脊髄辺縁部動静脈ろう・脊髄髄内動静脈奇形では、術中MEPモニタリングを用いて安全性を高めています。
当院は、全国に36施設ある(2015年11月24日現在)、日本脊髄外科学会指定の脊髄外科医の訓練施設となっており、脊椎・脊髄疾患のすべてを治療の対象にしています。中でも、脊髄動静脈奇形の治療例数は多く、最近5年間(2011-2015年)の脊髄動静脈奇形の手術件数は33件です。

表7 脊髄動静脈奇形の治療法
タイプ直達手術カテーテル手術
硬膜 動静脈ろう ◎ 根治可能 ○ 根治可能(再発多い)
脊髄 辺縁部動静脈ろう ○ 根治可能 ○ 根治可能
脊髄 髄内動静脈奇形 △ 治療困難 △ 治療困難
脊髄 硬膜外動静脈ろう ○ 根治可能 ◎ 根治可能

当院で行っている臨床研究・実績など

当科での、この分野の代表的な臨床研究は次の通りです。

  1. Takai K, Kurita H, Hara T, Kawai K, Taniguchi M. Influence of indocyanine green angiography on microsurgical treatment of spinal perimedullary arteriovenous fistulas. Neurosurg Focus. 2016;40:E10
  2. Takai K, Komori T, Taniguchi M. Microvascular anatomy of spinal dural arteriovenous fistulas: arteriovenous connections and their relationships with the dura mater. J Neurosurg Spine. 2015;23:526-33.
  3. Takai K, Taniguchi M. Microsurgical resection of an intramedullary glomus arteriovenous malformation in the high cervical spinal cord: retrograde dissection techniques of the nidus located between spinal tracts. Acta Neurochir (Wien). 2015;157:1659-64.
  4. Takai K, Taniguchi M. Comparative analysis of spinal extradural arteriovenous fistulas with or without intradural venous drainage: a systematic literature review. Neurosurg Focus. 2012;32:E8.

最終更新日:2016年3月29日

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