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神経根引抜き損傷後の痛み

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疾患概要

5. 引き抜き損傷.jpg日本脊椎外科学会ホームページより引用

神経根引抜き損傷とは、バイク事故や転落事故などより手が強くひっぱられて、頚の中の脊髄から神経根が引き抜かれて起きる病気です(上図)。事故の怪我が癒えて1ヶ月くらい後から徐々に手の痛みが強くなってくることがあります。
原因は、神経根が引き抜けた脊髄にあります。痛みは手の領域に感じますが、痛みの発生源は、手ではなく頚の中の脊髄の中にあります。この痛みは、いろいろな薬の治療を行っても押さえることが難しいです。

症状

神経根引抜き損傷によって、頚の中の脊髄に問題が起こると、引き抜き側の手に痛みが起きます。手の神経は主にC5-8まで4本の神経根が担当しています。引き抜きが起きた神経根の担当範囲に痛みが出ます(表1)。痛みは慢性的な強いしびれを背景として波状の激しい痛みが加わります。特に波状の間欠痛がつらいことが多いです。波状の間欠痛は特に誘因なく不意におこり、日中に活動している時にも、夜寝ている時にも痛みが出ます。この痛みは5-20年の長い経過で悪化します。

表1 引き抜き神経根と痛みの範囲
引き抜き神経根手の痛みの範囲
第5頚椎神経根
第6頚椎神経根 肘から先・親指側
第7頚椎神経根 肘から先・小指側
第8頚椎神経根 手の平と甲

治療法・対処法

6. 引き抜き損傷の手術.jpg日本脊椎外科学会ホームページより引用

当院では、開院以来この病気の外科治療に取り組んでいます。1980-90年代には、針電極を用いた手術を行っていました。2011年から手術顕微鏡を用いた新しい手術を行っています。
全身麻酔を用いて痛みのない状態で手術を行います。うつぶせで頚部正中の皮膚を切り、筋肉をこわさない様にしてはがしてよけます。手術用のドリルを用いて、椎弓を一時的にとりはずし、最後には元にもどします。
手術用の顕微鏡下に、引抜き損傷がおきた脊髄の痛みの元となっている部分を破壊する処置を行います(上図)。2011年からの新しい手術方法を行った患者さんは、9割で手術直後から波状の痛みを減らし薬を減量することができています。ごくまれに、術後に新たな痛みが出るなど、症状が一時的に悪化することもあります。回復には個人差があります。

患者さんへのワンポイントアドバイス

神経根引抜き損傷の痛みに対する第一選択の治療は痛み止めの内服薬です。これはペインクリニックなどで行われています。十分な薬の治療を行っても、激しい痛みがコントロールできない場合に手術治療を検討します。

当科の専門医

谷口真(日本脊髄外科学会指導医39)、髙井敬介(日本脊髄外科学会指導医95)

疾患概要・病態

神経根引き抜き損傷とは、上肢の高度の牽引により、脊髄から前後の脊髄神経根が引き抜かれて起きる損傷を言います。神経根引き抜き損傷の患者の10-20%に、患側上肢の疼痛を発症します。
疼痛の原因として、神経根引き抜きレベの脊髄後根進入部Dorsal root entry zone (DREZ)における、求心路遮断によって形成された過敏な神経プールや脊髄路の障害などが考えられています。

症状

神経根引き抜き損傷後の患側の上肢には、引き抜き神経根領域の運動障害と著明な筋萎縮を認めます。痛覚を含めた広範な感覚障害があるにもかかわらず、感覚のないはずの部位に疼痛が遷延することがあります。疼痛の範囲は皮膚知覚帯を踏襲し、障害された脊髄の髄節支配パターンに一致します(表1)。持続慢性的な痛みを背景に、波状の激しい痛みが加わることが多く、特に波状の間欠痛の苦痛を訴えます。痛みは外傷直後ではなく1-4週間後から始まり、5-20年の長い経過で徐々に悪化することが知られています。

表1 引き抜き神経根と痛みの範囲
引き抜き神経根手の痛みの範囲
C5
C6 前腕橈側・第1-2指
C7 前腕尺側・第3-5指
C8 手掌・手背

治療・最近の動向

当院では、開院以来この病気の外科治療に取り組んでいます。1980-90年代には、針電極を用いた手術を行っていました(文献1)。2011年から手術顕微鏡を用いた新しい手術を行っています(文献2)。
当院は、全国に36施設ある(2015年11月24日現在)、日本脊髄外科学会指定の脊髄外科医の訓練施設となっており、脊椎・脊髄疾患のすべてを治療の対象にしています。中でも、神経根引き抜き損傷の治療例数は年々増えてきて、最近5年間(2011-2015年)の神経根引き抜き損傷の手術件数は12件です。

※文献1,2はそれぞれ以下をご参照ください。

当院で行っている臨床研究・実績など

当科での、この分野の代表的な臨床研究は次の通りです。

1. Ishijima B, Shimoji K, Shimizu H, Takahashi H, Suzuki I. Lesions of spinal and trigeminal dorsal root entry zone for deafferentation pain. Experience of 35 cases. Appl Neurophysiol 1988;51:175–87.

2. Takai K, Taniguchi M. Modified dorsal root entry zone lesioning for intractable pain relief in patients with root avulsion injury. J Neurosurg Spine. 2017 in press

最終更新日:2016年3月29日

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