脳神経外科
診療科のご紹介
脳神経外科のmission
未来のこの国への貢献
我々が診療した子ども達が成長し、やがて成人となり社会に還元してくれることで、子ども達に対する脳神経外科医療を通してこの国の未来に貢献すること。
脳神経外科のvision
その子らしく、その子のために
その子がその子らしく生きるために、その子のためのオーダーメードの医療を考案し提供すること。
診療内容・特色
胎児を含む15歳以下の子ども達に発生する、脳、脊椎・脊髄、末梢神経疾患の診断と外科治療を担当しています。また、脳神経外科手術を受けた子ども達のフォローアップも行っています。疾患により、都立多摩総合医療センター、都立神経病院とチームを作成し、協力して診療にあたっています。
子ども達の脳や脊髄といった神経系は、発育や発達段階によって大きく変化することから、それを診療するためには高度かつ専門的な知識、技術、経験が必要となります。私たちは、小児専門医療機関における脳神経外科として、関連各科との密接な連携のもと、より高度で包括的な医療を提供しています。
脳神経外科では、脳腫瘍、頭蓋縫合早期癒合症や二分脊椎等の奇形疾患、頭部外傷、てんかんなどの診療を重点的に行っています。
脳腫瘍では、脳神経外科、血液・腫瘍科、多摩総合医療センター放射線治療科の協働により集学的治療を施行し、これまで良好な成績を残してきました。また、間脳下垂体腫瘍では、神経内分泌障害の周術期管理、長期管理を内分泌科と共同で行っています。
さらに脳腫瘍治療では入院期間が長期に及ぶことから、子ども・家族支援部門の協力により治療中の学校生活や復学支援にも力を入れ、退院後子ども達がスムーズに地域社会に戻っていけるような支援体制を整えています。
頭蓋縫合早期癒合症に対しては、形成外科と協働で積極的に手術を行い、子ども達の精神運動発達と整容の2つの面からこの疾患に対してアプローチしています。また、二分脊椎の子ども達には、脳神経外科、泌尿器科、外科、消化器科、リハビリテーション科などの複数の科が診療に当たり、ひとりひとりの疾患や重症度に応じたオーダーメードの医療を提供しています。
こんな症状のお子さんが対象です
小児脳神経外科疾患=子ども達の神経系に発生する外科疾患、を担当しています。
具体的には下記のような疾患です。
- 二分脊椎や二分頭蓋などの神経管閉鎖不全症、脊髄脂肪腫、キアリ奇形などの神経系の先天奇形
- 頭蓋縫合早期癒合症、頭蓋頚椎移行部疾患などの骨の先天奇形
- 水頭症、ダンディ・ウオーカー症候群、くも膜嚢胞などの脳脊髄液に関連した疾患
- 頭部外傷、脊椎脊髄外傷など
- 脳腫瘍、脊髄腫瘍など
- 腕神経叢障害などの末梢神経障害
- 痙性麻痺や痙縮、難治性てんかんなどの機能的神経外科疾患
- もやもや病、脳動静脈奇形など脳血管障害
主に取り扱っている疾患、治療内容
脳腫瘍 (のうしゅよう)
二分脊椎(にぶんせきつい)
頭蓋縫合早期癒合症 (ずがいほうごうそうきゆごうしょう)
乳幼児硬膜下液貯留 (にゅうようじこうまくかえきちょりゅう)
痙縮 (けいしゅく)
水頭症 (すいとうしょう)
水頭症とは?
小児脳神経外科が扱う領域で、最も多い疾患のひとつです。水頭症とは、頭に水(脳脊髄液)が過剰に貯留してしまう病気のことです。
脳脊髄液の最も大きな役割は、外的衝撃から脳、脊髄を保護する緩衝作用です。
また、直接表面から脳脊髄を栄養したり、感染を防御したり、損傷した組織の治癒を促す成分が含まれています。脳、脊髄が正常に機能するためにはなくてはならない体液です。水頭症とはそのような脳脊髄液が過剰に貯留した病態です。
水頭症が発見されるとき
水頭症は、水頭症病態だけというのはむしろ少なく、他の脳神経疾患に合併するケースが多いです。例えば脳腫瘍や脳出血後、髄膜炎や頭部外傷後に発症することがあります。また、くも膜嚢胞(のうほう)や脊髄髄膜瘤、キアリ奇形など他の先天性疾患に合併している場合も多いです。
水頭症は大きく分けて、
- 脳脊髄液吸収障害が原因の交通性水頭症と
- 脳脊髄液循環障害が原因の非交通性水頭症
の、2つにに分類されます。両方が混在していることもあります。
乳幼児の場合、大泉門の膨隆や、頭囲拡大で発見されるケースが多いです。何かの機会にCTを撮って偶然発見されることもあります。最近では出生前に超音波やMRIで胎児診断されるケースも増えてきています。
水頭症の治療法
水頭症を放置すると、徐々に頭囲が拡大して脳圧が亢進していきます。最悪の場合には、脳ヘルニアとなって意識がなくなり、死に至ります。将来的な脳障害を最小限にするためにも、診断がついた時点で早期の治療が必要です。
水頭症の手術方法で最も一般的なのは、短絡術(シャント術)です。頭蓋内に貯留した脳脊髄液を自分の体の他の部分に流してあげるというものです。
中でも脳室-腹腔短絡術(V-Pシャント術)が最も多く、脳脊髄液を皮下に留置したバルブつきのチューブを通して腹腔内へと流し、そこで吸収してもらうというものです。
また第3脳室と第4脳室を連絡する中脳水道が狭窄して起きる水頭症など、髄液循環障害が原因で、吸収能が保たれているような場合では、内視鏡を用いた治療法も行われています。脳内の第3脳室というところの底に孔を開け、新たに髄液の通り道を設けるという手です。
神経内視鏡下第3脳室開窓術といいます。この水頭症の手術では、体内にチューブなどの異物を残さないため、その後の合併症が少なくて済みます。
しかし適応となる症例が限られ、また髄液循環が確立していない2歳以下とくに1歳以下では成功率が低くなります。
当科では、シャント手術にも神経内視鏡手術にも対応しています。
くも膜嚢胞 (くもまくのうほう)
くも膜嚢胞とは?
くも膜は脳を覆う膜の1種で、内膜と外膜の2層構造になっています。この2層間に脳脊髄液が貯留して袋状になったものがくも膜嚢胞です。
くも膜嚢胞の原因
大部分が先天性です。まれに自然消退の報告もありますが、通常は治療なしで小さくなることはありません。
くも膜嚢胞が原因と考えられる頭痛や麻痺などの症状がある場合、画像上くも膜嚢胞による脳の圧迫がある場合、くも膜嚢胞に隣接する頭蓋骨が変形したり薄くなったりしている場合、くも膜嚢胞が徐々に大きくなってきている場合などでは、治療の対象となります。
無治療のくも膜嚢胞では、頭部打撲などをきっかけに頭蓋内出血が起こった場合、嚢胞内部に大きな出血・血腫を来す危険性があります。
くも膜嚢胞の治療法
くも膜嚢胞の唯一の治療法は、脳神経外科手術です。
手術の方法は
- 嚢胞を開窓して周辺と交通をつける嚢胞開窓術と、
- チューブを用いて嚢胞と離れた他の部位に交通をつけるシャント術
の2つがあります。
嚢胞開窓術には、小開頭して手術用顕微鏡下で開窓する方法と、開頭せず神経内視鏡下で開窓する方法があります。
シャント術にも嚢胞とお腹の中とを繋ぐ嚢胞ー腹腔シャント術や、嚢胞と脳室あるいは嚢胞と、くも膜下腔を繋ぐシャント術などがあります。
いずれの術式も手術そのものの侵襲はあまり大きくないので、手術に伴う危険性、後遺症の可能性は低いです。ただ術後合併症として、開窓部位の閉塞による嚢胞の再発やシャントの閉塞・感染などがあり、再手術となることもときどきあります。
当科ではいずれの術式にも対応しており、くも膜嚢胞の病態に応じて、患者さんにもっとも適した治療法を選択します。
てんかん
てんかんとは?
慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで、脳の症状(いわゆるてんかん発作)が複数回起こるものです。
てんかんが起きる原因
子どものてんかんの原因は多様です。また年齢とともに症状・脳波所見が大きく変化することがあります。さらに子どものてんかん発作は、頻回になると薬が効きにくいタイプになります。その一方で自然に発作が消失するてんかんもあります。
てんかんの治療法
子どもの難治性のてんかんの中にも、大人と同様、手術で発作がよくなるものがあります。手術治療の目的は、てんかん発作そのものの抑制だけではなく、脳が頻回にてんかん性異常波に曝されることによっておこる発達障害を改善することです。本人の発作が改善することで、本人だけでなく家族のQOLも改善します。
焦点切除術、大脳半球切除術・離断術、脳梁離断術などがあります。子どものてんかん病態に応じた、適切な術式を選択することが重要です。
また最近では、迷走神経刺激術といって、前述の術式の適応がない場合、あるいは手術をしてもあまり効果がなかった場合などに、左頚部の迷走神経に刺激電極を埋め込んで、持続的に迷走神経を刺激することで、てんかん発作を改善する方法もあります。
子どものてんかん治療は、てんかんを専門とする脳神経外科医・神経内科医が中心となって、検査・診断・薬剤調整・手術を行うチーム治療体制の構築が必要です。当院でも、それを実践しながらてんかん治療をしています。
脳動静脈奇形 (のうどうじょうみゃくきけい)
脳動静脈奇形とは?
先天性の脳血管障害です。子どもの場合、多くが出血で発見されます。
けいれん発作や意識障害、片麻痺などの症状を呈することもあります。脳血管撮影やMRI, CTで、nidusと呼ばれる血管の異常が確認されることで、診断されます。
年間の出血率は約3%で、子どもでは5人に1人が致死的出血になるとされています。
脳動静脈奇形の治療法
外科的にnidusを摘出する方法、ガンマナイフなどの定位放射線治療、カテーテルを用いた血管内治療などがあります。またそれらを組み合わせて治療することもあります。
nidusの大きさや場所、出血時の全身状態などを考慮して、適切な治療法を選択します。
もやもや病
もやもや病とは?
先天性の脳血管障害です。子どもの場合、多くが脳虚血発作(意識障害、脱力、感覚異常、けいれん、頭痛など)で発見されます。この虚血発作は、過呼吸(啼泣、吹奏楽器の演奏など)で誘発されます。脳血管撮影で、脳内にもやもや血管とよばれる異常な血管網が確認されることで、診断されます。成人になると、出血のリスクが高くなります。
もやもや病の治療法
外科的に血行再建術を施行して、脳虚血の状態を改善することです。血行再建術にも、直接血行再建術と間接血行再建術があります。
直接術とは、頭皮の血管と脳表面の血管を直接吻合して血流を増やす術式です。
間接術とは、頭皮の血管を脳表面に接着させて、その頭皮の血管から新たな血管が新生して、血流を増やす術式です。それに追加して、筋肉や帽状腱膜、硬膜を脳表に接着させることもあります。
年齢、もやもや血管の程度、症状などを考慮して、適切な治療法を選択します。
海綿状血管腫 (かいめんじょうけっかんしゅ)
海綿状血管腫とは?
先天性の脳血管障害です。海綿状の血管の集合体で、脳のあらゆるところに発生する可能性があります。
多くの場合無症候性ですが、小児では出血をきたしやすく、頭痛やけいれん発作で発見されることが多いです。
出血率は2ー3%ですが、一度出血を起こした海綿状血管腫は、再出血のリスクが高くなります。出血をきたした場合や、てんかんなど神経症状を合併している場合には、手術治療の対象となります。
海綿状血管腫の治療法
手術が海綿状血管腫の唯一の治療法です。外科的に血管腫を摘出します。
とくにてんかんを合併している場合には、血管腫だけでなく、その周囲の変色し硬くなった脳実質も摘出した方が、術後のてんかんのコントロールが良好とされています。
ただし、血管腫のある場所によっては、手術ができない場合もあります。年齢、血管腫のある場所、症状などを考慮して、手術の適応、タイミングを考慮します。
医療機関の先生方へ
脳腫瘍などの集学的治療が必要な疾患や、複数診療科の協力が必要な疾患(例えば二分脊椎、頭蓋縫合早期癒合症、頭部外傷など)については、小児専門医療機関である当センターならではの特色をいかし、積極的に診療を行っています。
脳神経外科では、ニューロナビゲーションシステムを導入し、蛍光手術顕微鏡やエコーとリンクさせながら可及的多量の腫瘍摘出を目指しています。
また、脳腫瘍、てんかん、脊髄手術などでは、術中電気生理学的モニタリングやマッピングを使用し、後遺障害を回避する工夫を行っています。
神経内視鏡を装備し、より侵襲の少ない手術や手術顕微鏡の欠点を補うような工夫をしています。
診療実績
診療実績のグラフ
(2010年4月1日〜2011年3月31日)
開院1年目となった2010年度、脳神経外科に入院した新入院患者数は92,延入院患者数は1770でした。2010年8月以降は、病床稼働率も上昇し始め、常に140%程度を推移しました。手術総数は97件、その内訳は図に示したとおりになっています。
小児専門医療施設における脳神経外科という特徴から水頭症、先天奇形疾患が手術総数の半分を超えています。
また、複数の科や他職種の協力が必要な脳腫瘍や頭部外傷に対する手術もそれぞれ、10%、19%となっています。
スタッフ
| 氏名 | 役職 | 専門分野 | 主な資格等 |
|---|---|---|---|
| 宮川 正 (みやかわ ただし) |
医長 診療科責任者 |
小児脳神経外科学、特に脳・脊髄腫瘍の集学的治療や機能予後を重視した外科治療 |
ECFMG・アメリカ医師免許、小児脳神経外科クリニカルフェロー(マイアミ、シアトル)、脳神経外科専門医、がん治療認定医、PALS provider |
| 杉山 一郎 (すぎやま いちろう) |
医長 | 小児の脳・脊髄外科、てんかん外科、神経内視鏡手術、スポーツ脳神経外科 |
日本脳神経外科学会専門医、日本てんかん学会専門医、日本神経内視鏡外科学会技術認定医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本小児神経外科学会誌「小児の脳神経」編集委員 トロント大学トロント小児病院神経科てんかんフェロー修了、ボトックス注 講習・実技セミナー修了(顔面けいれん・痙性斜頚)、髄腔内バクロフェンポンプ(ITB)療法講習会修了 |
| 谷口 真 (たにぐち まこと) |
部長 神経病院兼務 |
小児脳外科一般、特に二分脊椎、小児脳腫瘍、不随意運動の外科治療 | 日本脳神経外科学会専門医、日本脊髄外科学会理事・指導医・認定医、日本定位機能的脳外科学会理事・認定医 |
| 森野 道晴 (もりの みちはる) |
部長 神経病院兼務 |
てんかん外科、脳腫瘍外科 | 日本脳神経外科学会専門医、日本てんかん学会指導医・専門医 |
| 須永 茂樹 (すなが しげき) |
医長 神経病院兼務 |
てんかん外科 | 日本脳神経外科学会専門医、日本てんかん学会専門医 |











