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腎臓内科

尿路感染症

2018年10月26日 1.1版

病気について

尿路感染症(urinary tract infection:UTI)は、通常は無菌である(汚染されていない)はずの尿から細菌が見つかる感染症です。感染する部位によって上部尿路感染症(腎盂腎炎など)、下部尿路感染症(膀胱炎など)に分けられます(ここでは主に上部尿路感染症について記載します)。上部尿路感染症は発熱を伴い、感染により腎機能障害を起こすことがあります。また、先天性腎尿路異常(詳細は『先天性腎尿路異常』の項目を参照)に合併することがあり、これらの発見のきっかけとなることがあります。当院では急性期の治療を総合診療科で入院治療を行い、病気の原因検索や再発予防などについては当科と連携をとり、総合診療科の「尿路感染症外来」で行っています。

疫学

尿路感染症は小児の感染症の原因として頻度の高い疾患で、特に3か月未満の乳児では一番多い細菌感染症です。
2歳未満の症状のはっきりしない熱性疾患の5〜8%が上部尿路感染症というデータもあります。
3か月未満だと男児に多く、1歳以降だと女児に多くなります。特に学童では、女児は男児の7〜8倍になります。

症状

症状は、発熱、哺乳力低下、嘔吐、下痢、不機嫌など他の感染症でも認めるものが多く、症状を訴えることのできない乳幼児では見逃されやすい疾患です。年長児では、頻尿、排尿時痛、腰背部痛、叩打痛などを訴えることもあります。

診断

診断は症状に加え、尿検査で尿中の白血球(細菌と戦う細胞)の検出や、実際に尿中の細菌を証明することで行います。清潔に検査を行うために、乳幼児の場合は尿道に細いチューブを挿入して尿をとります。トイレで排尿ができる年長児の場合は、陰部を消毒して中間尿をとります。
他に血液検査でからだの中の炎症を示す数字の上昇(白血球、CRPなど)も診断の参考になります。菌血症(血液の中に細菌が入ってしまった状態)を引き起こすこともあるため、血液培養検査(血液の中に細菌がいるかどうかの検査)も行います。

治療

治療は7〜14日間の抗菌薬投与を行います。乳幼児の場合は、菌血症を合併し急激に具合が悪くなる危険性があること、また抗菌薬の内服が確実に行えない可能性があることから、基本的には入院の上、点滴での抗菌薬投与を行います。当院では初期治療を総合診療科で行っています。
細菌の種類が判明した場合、その細菌により効果的な抗菌薬に変更します。また、治療開始後48時間でも臨床症状が改善しない場合は血液検査や尿検査の再検査や画像検査を追加し、抗菌薬を変更することがあります。症状の改善、経口摂取ができること、血液培養検査の結果が問題ないことを確認できたら抗菌薬を内服へ変更し退院します。

原因の検索

小児、特に乳幼児では排尿機能が未熟であるため、成人や年長児に比べて尿路感染症にかかりやすいです。他の要因としては膀胱尿管逆流(VUR;vesicoureteral reflux)や尿路の通過障害(水腎症、水尿管症、尿道狭窄、後部尿道弁など)、神経因性膀胱(脊髄髄膜瘤、脊髄損傷など)の存在があります。男児の包茎、便秘症、脱水症、排尿後の不適切な清拭方法(後ろから前に拭くなど)も尿路感染症のリスクとなります。
上部尿路感染症は腎瘢痕(腎臓の傷痕)を生じることがあり、有熱期間が長く、再発が多いほどそのリスクは上がります。そのため、腎尿路異常の評価を行うとともに、再発を予防する必要があります。
腎尿路の異常を調べる検査には、腹部超音波検査、排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG)、DMSAシンチグラフィ(腎静態検査)があります。場合によっては造影CT検査、MRI検査などが追加されることもあります。

  1. 腹部超音波検査
    腹部超音波検査を行い、高度の水腎症や水尿管症など外科的な処置が必要な尿路の通過障害がないかどうかを評価します。また、感染により腎臓が腫れていると正確な大きさの評価ができないため、初回の尿路感染症から約半年後に超音波検査をもう一度行います。
  2. 排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG;voiding cystourethrography)
    当院では初回の上部尿路感染症の患者さんの全例で、退院してから1か月を目途にVCUGを行っています(現在、適応を限定するための後方視的調査中です)。検査方法は尿道に細いチューブを挿入して膀胱の中を造影剤で満たし、尿が出始めてから終わるまでの間にレントゲン写真を数枚撮ります。通常は膀胱から尿管・腎臓へは尿が逆流しない仕組みになっていますが、VURがある場合は尿管や腎盂(腎臓の入り口)が造影されます。下部尿路異常(尿道狭窄、後部尿道弁など)の評価も併せて行います。
  3. DMSAシンチグラフィ
    初回の尿路感染症から6か月以降に、VCUGや腹部超音波検査で異常を認めた症例、尿路感染症を繰り返している方などに対して行っています。腎瘢痕に加え、腎臓のはたらきを調べることもできる検査です。点滴から核種(弱い放射線を出す物質)を投与し、2時間後に撮影を行います。乳幼児では鎮静薬(眠くなる薬)を使って行うこともあります。

再発予防

尿路感染症の予防策は生活指導、抗菌薬予防内服、外科的治療があります。

  1. 生活指導
    女児の場合は適切な清拭方法(前から後ろ)を指導し、陰部を清潔に保つことが大事です。
    乳児期の男児は基本的に包茎がありますが、尿路感染症を起こした場合は治療が必要です。包茎が強く外尿道口(尿が出る穴)が見えない場合は、ステロイドの軟膏を塗って包皮を柔らかくして剥けやすくする治療をすることもあります。
    便秘症も尿路感染症のリスクになります。排便時に強いいきみを伴う場合やコロコロした硬い便を認める場合、レントゲン検査で腸に便がたくさん溜まっている場合などには便秘症の治療も行います。乳幼児では綿棒での肛門刺激、腹部マッサージなどを行いますが、改善がない場合は薬物療法(ラクツロース、ピコスルファート、マルツエキスなど)を行うこともあります。
  2. 抗菌薬予防内服
    初回の尿路感染症の場合、VURの有無が判明するまでは予防的に抗菌薬を内服します。
    VCUGでVURを認めない場合、もしくはVURが軽度(grade 1-2)の場合は予防内服を中止します。
    VURが中等度以上(grade3以上)の場合は予防内服を継続します。VURは自然軽快する傾向があるため、半年から1年後にVCUGを行いVURの再評価を行います。VURについては『先天性腎尿路異常』の項目をご参照ください。
  3. 外科的治療
    VCUGで高度のVUR(grade5)を認めた場合や、抗菌薬の予防内服中にも関わらず尿路感染症を再発した場合、年齢が大きくなっても中等度以上のVURがある場合では、手術に踏み切る場合もあります。当院ではVURの手術は泌尿器科が行っています。

予後

尿路感染症を繰り返すことで腎瘢痕を生じることがあり、将来的な腎機能障害の原因となることがあります。
腎瘢痕を作らないために、尿路感染症の早期発見、早期治療が重要です。

引用文献

  1. 木全貴久ら:小児尿路感染症に関する最近の考え方,日児腎誌 Vol.27 No.2: 105-116. 2014