臨床遺伝科
診療科のご紹介
先天性・遺伝性疾患を専門とする小児科です。
先天性・遺伝性疾患に対する診断、染色体や遺伝子の異常、症候群に関する医療情報の提供やご家族が抱く心理社会的問題への支援をおこなっています。
臨床遺伝科では、「ヒトの多様性を認め合える社会に繋がる遺伝医療」を提供することを、診療理念に掲げています。
わかりにくい遺伝の話がわかりやすく「つたわる遺伝医療」、想定外の出来事に対しご家族の孤独感と孤立感が深まることのないよう「ささえる遺伝医療」に重点をおいた診療を心掛けています。
「正確な診断」をめざします。
お子さんの状態を正しく把握すること(正確な診断)は、見通しをもった子育て、正しい理解にもとづく家族計画へつながる第一歩となります。
染色体や遺伝子に起きた変化を元に戻すといったような、根本的に問題を解決することは困難です。しかし、正確に診断することで、疾患の自然歴・行動特性を考慮した健康管理、適切な療育・教育が可能となり、一定の根拠をもった遺伝的リスクの推定などを期待することができます。
どのような医療でも診断は重要ですが、「正確な診断」は遺伝医療において、一層重要な意味をもっています。
疾患特性と個人差を考慮した健康管理をめざします。
かかりやすい「病気」を予め知っておくことは大切です。臨床遺伝科では、合併し易い病気の予防的健康管理および治療の在り方を一緒に考えていきます。
各科専門医および子ども家族支援部門のスタッフと協力して、お子さんが生活の質を保ちながら、ご家族と一緒に安心して地域社会で過ごすことができるよう、必要な医療と福祉を提案・提供してまいります。
「からだ」と「こころ」を等価に考える医療をめざします。
ご家族の心的負担に対するこころのケアについては、こころ診療部門との緊密な連携により、遅滞なく対応するための診療体制が整っています。ご家族の要望に傾聴しながら、こころ専門医による診療も適宜紹介しています。
診療内容と週間スケジュール
通常の遺伝診療と遺伝カウンセリングの外来枠を分けて設定してあります。
| 遺伝外来 | |
|---|---|
| 通常の遺伝診療全般をおこなっています。 | 臨床遺伝科枠 初診、再診を問わず診療しています。 月曜日の午後(毎週) 金曜日の午前(毎週) 総合診療科枠 おもに再診のみ診療しています。 *初診対応も可能です。 木曜日の午後(第2、4週のみ) |
| 遺伝カウンセリング外来 | |
| ゆっくり時間をとりながら、遺伝カウンセリングをおこなっています。
臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーが対応しています。
内容に応じて、適切な日時、遺伝カウンセリング枠をご案内します。当センター代表:042-300-5111を通じて、遺伝カウンセリング窓口担当(細川:PHS 5433)まで直接ご相談下さい。 |
小児総合医療センター枠 火曜日の午後(第2、4週のみ) 多摩総合医療センター枠 水曜日の午後(毎週) |
臨床遺伝科の特色
先天性疾患の「正確な診断」
- 複数の特徴的な体つき(外表および内臓奇形)、成長・発達の経過、家系図などを手掛かりに、形態異常診断学(dysmorphology)に基づく診断アプローチや、遺伝学的検査を組み合わせながら、「正確な診断」をめざします。
- 高精度な網羅的ゲノム解析を含めた、各種遺伝学的検査も、必要に応じて対応しています。
- 検査にあたっては、ご家族の自律的な意思決定を尊重し、可能な限り遺伝カウンセリングを実施しています。「正確な診断」を目指す目的、予想される結果、得られた結果の意義、などについて説明し、ご家族が心構えをもって遺伝学的検査に臨めるよう努めています。
総合的な小児医療のマネージメント
- 地域社会で見通しのある子育てができるよう、コメディカルとの協働、地域医療機関・保健行政のみなさまと情報共有することにより、包括的な地域遺伝医療をめざしています。
- 診断確定後のお子さんに対しては、必要に応じて専門診療部門と緊密に連携しながら、予見される合併症に対して定期健康管理を進めています。
- お子さんの合併症・発達段階をみながら、時機をみて療育施設を紹介しています。
- 子ども家族支援部門との連携により、有用な医療福祉情報の提供に努めています。
遺伝カウンセリング
- ご家族やご親戚の疾患が他の家族や次の妊娠に影響する可能性があるのかどうか知りたい、遺伝学的検査(診断確定のための検査、胎児に対する検査など)を提案されたが受けるべきかどうか迷っている、詳しく内容を知りたい、という方がおもな対象になります。
- 臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーが担当しています。
- 費用については、保険診療の範囲で対応しています。(平成23年度現在)
こんな症状のお子さんが対象です
診断未確定のお子さん
染色体や遺伝子に変化が起こると、成長や発達の遅れ、体つきに特徴(奇形)があらわれることがあります。遺伝学的検査(染色体や遺伝子の検査)や診察により、これらの症状を伴うお子さんの原因を一元的に解釈することをめざしています。
先天性疾患に対する健康管理が必要なお子さん
先天性疾患では、多部門にわたる総合的な専門医療を必要とすることが少なくありません。診断が確定しているお子さんに対しては、臨床遺伝科が窓口となって、専門診療科と緊密に連携をとりながら、疾患特性や個々の状態に配慮した健康管理を心がけています。
先天性疾患に関する遺伝的問題を相談したいご家族
家系内の先天性疾患が、家族や次子の出産に与える影響について心配されている方には、遺伝カウンセリングをご案内しています。一方的な情報伝達の場とならないよう、臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーが、ご家族との対話を通じて、遺伝医療情報と心理社会的支援を提供しています。
主な対象疾患と具体的な疾患名
先天性、遺伝性疾患全般を対象としています。
主な対象疾患)染色体異常、多発奇形症候群、原因不明の多発奇形/精神発達遅滞、骨系統疾患
例)Down症候群、1p36欠失症候群、5pモノソミー、4pモノソミー、13トリソミー、18トリソミー、トリプルX、クラインフェルター症候群、22q11.2欠失症候群、Williams症候群、Prader-Willi症候群、Beckwith-Wiedemann症候群、Sotos症候群、Rubinstein-Taybi症候群、CHARGE症候群、Marfan症候群、Noonan症候群(関連疾患)、Goldenhar症候群、Treacher-Collins症候群、Stickler症候群、Kabuki症候群、Russell-Silver症候群、軟骨無形成症、頭蓋骨縫合早期癒合症、口唇口蓋裂、遺伝性難聴、神経線維腫症など。
主に取り扱っている疾患、治療内容
染色体異常
染色体異常の種類は様々であり、それぞれ何を注意したらよいのか、対応は少しずつ異なります。染色体異常として、ひとまとめに心配するのではなく、染色体異常に関する情報を整理する場として、遺伝外来をご利用ください。
不均衡型染色体異常(おもに症状を伴う)
出生新生児の約1%では、染色体上に「違い(異常)」を認めることが知られています。そのうちのおよそ半分は、不均衡型(遺伝情報の過不足を伴う)染色体異常と呼ばれるものであり、多くの場合、ゆっくりした成長(成長障害)、のんびりした発達(発達遅滞)、体つきの特徴(奇形)などの症状を認めます。症状を伴うため、「染色体異常症」と呼ばれ、医療管理や療育訓練が必要になることがあります。
均衡型染色体異常(おもに症状を伴わない)
一方、残り半分は、大多数の人と異なる染色体上の違いがあるものの、全体として遺伝情報のバランスが取れている、均衡型(遺伝情報の過不足を伴わない)染色体異常と呼ばれます。これらは、原則、無症状で、多くの方が一般集団とかわりなく生活することができます。
例えば、代表的な均衡型染色体異常とされる、均衡型相互転座(2カ所以上の染色体部位に切断が起こり、各々の断片を交換して再結合した結果生ずる染色体構造異常のひとつ)は、一般集団の約600人に1人みられます。
遺伝情報の過不足がなく、多くは無症状のため、ご自身も気付くことなく、通常と変わらず生活可能ですが、家族計画(赤ちゃんを授かること)を考えるとき、この「体質」があると、染色体異常症をもつ(症状を伴う)赤ちゃんを授かる確率が一般集団よりも高くなることが知られています。
多発奇形症候群
多発奇形症候群では、複数の体つきの特徴(外観上および内臓の奇形)に加え、成長・発達に遅れがみられることがあります。特定の症状の組み合わせから、何らかの症候群(体質)が想起できれば、一元的に原因を説明できる可能性があります。
多発奇形症候群における診断の流れ
原因はさまざまであり、疑われる疾患によっては種々の診断方法を検討することがあります。一般的な診断アプローチは下記の通りです。
- お子さんの身体的特徴、成長・発達過程、家系内の疾患情報を参考に診察
-
- 疑われる疾患があれば、関連する特定の検査について説明
- 疑われる疾患がなければ、まだ実施されていない検査について説明
- 検査の希望があれば、ご本人の承諾またはご家族の代諾のもと実施
- 後日(検査期間はさまざま)検査結果について開示
遺伝学的検査を検討する場合は、遺伝カウンセリング(目的と意義、遺伝子変異・染色体異常の検出率)を実施し、ご家族の検査に対する理解が深まるよう努めています。
先天性疾患の疫学
いろいろな検査をおこなっても原因が特定されないことがあります。出生時における先天性疾患の一般頻度は約5%ですが、その原因の内訳は、染色体異常(10〜15%)、単一遺伝子病(2〜10%)、出生前暴露(8-12%)、環境および遺伝的要因による多因子(20〜25%)に大別されます。
実は全体の半分が原因不明とされており、先天性疾患の原因を特定することは必ずしも容易ではありません。
診断を追究する意義
染色体、遺伝子レベルでみつかった問題を、直接治すことは多くの場合できませんが、原因がわかることで、お子さんに対する適切な健康管理、家系内における遺伝的リスクの評価、次子再発率の推定など、エビデンスに基づいた遺伝医療情報を提供できる可能性があります。
近年、めざましい解析技術の進歩により、種々の網羅的解析法(より高精度、より広範囲な解析法)の臨床応用が進んでいます。特定の疾患が疑われていなくても、これらを用いることで、診断に至った事例が報告されています。
最新の解析手法についても、他施設と協働しながら、必要に応じて実施しています。
遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリングとは?
「遺伝的問題に関する不安や心配を抱える患者家族の相談内容に十分な時間をかけて傾聴したうえで、適切な情報提供をおこない、置かれている状況への理解を深めてもらう事により、患者自身やその家族が生活設計上の選択を自律的に意思決定してゆくプロセスを支える医療」です。
ここでの遺伝的問題とは、特定の遺伝病、あるいは症状や体質が、自分やその他の家族に遺伝する可能性に限らず、遺伝病の詳細な説明、検査の適応、家族内での情報共有の方法など、遺伝に関するあらゆる問題が対象となります。
ニーズに応じてわかりやすい情報の提供をしていくとともに、ご家族の病歴を聴取し、遺伝医学的な知識に基づいた適切な評価を行ったうえで、遺伝カウンセリングを進めていく必要があります。
遺伝学的検査と遺伝カウンセリング
遺伝学的検査をもとに得た遺伝情報は、体質についての正確な診断や治療へと結びつくその一方で、自分自身の発症する可能性を知る(発症前診断)、次世代(子ども)に伝える遺伝情報を持っている可能性を知る(保因者診断)、おなかの中の赤ちゃん(胎児)の体質を知る(出生前診断)という点において、さまざまな心理的、社会的問題が引き起こされうる側面を持ち合わせています。
このような特性から、遺伝学的検査では、得られた遺伝情報をどのように活用するか、遺伝情報を知ることによりに生じうる問題にも十分に留意し、サポートを行いながら進めていくことが求められています。最終的には、お子さんやご家族の意思が尊重されます。「知る権利」とともに「知らないでいる権利」を提示し、対話による双方向のコミュニケーションに基づく遺伝カウンセリングが重要である、と考えられています。
現在、インターネット情報をはじめ、世の中にあふれる遺伝に関する情報とは無縁ではいられず、ご家族が不必要な不安を抱いている場合も少なくありません。正確な情報を知る、あるいは情報を整理する場のひとつとして、遺伝カウンセリング外来をご利用下さい。
遺伝情報の特殊性
遺伝情報は血縁者間での一部共有性、生涯にわたり不変性であること、個人が特定される可能性があるという特殊性から、究極の個人情報であるという見方があります。
本人や家族に社会的な不利益をもたらす可能性もあることから、遺伝学的検査により得られた遺伝情報を通常の医療情報と区別して慎重に取り扱う必要があると考えられます。当科でもプライバシーに対し、十分配慮した対応を行っております。
医療機関の先生方へ
「遺伝」という言葉の響きに、臨床遺伝科を受診すべきかどうか、ハードルの高さを感じてしまうご家族は少なくありません。
当科では、「家族の成り立ちをささえる遺伝医療」をめざし、遺伝を専門職とするスタッフが中心となって、医療情報および心理社会的支援の提供に努め、遺伝的問題に対して細心の注意を払い、真摯に対応することを心掛けています。
重点を置いている診療
- 先天性・遺伝性疾患全般に関する診療のご依頼には、幅広く対応させていただいております。具体的には、 各種検査をおこなうも診断未確定の方、遺伝性疾患の家系内における遺伝的リスクを心配されている方、次回妊娠時に罹患児と同様の疾患が再発する可能性を不安に思っている方、などへの対応に重点をおいた診療をおこなっています。
- また、診察結果は、できるだけ速やかに返送するよう心掛けております。記載内容に関する ご質問、ご相談については、お気軽に下記連絡先までお問い合わせください。
緊急的な診察が必要と考えられるお子さん、ご家族への対応
予約枠の調整、枠外での診療にも随時対応しております。直接、吉橋までご連絡ください。
臨床遺伝科にご紹介いただく際のお願い
- 稀少疾患(orphan disease)をご依頼いただくことが多く、事前に広範かつ最新の情報収集
を要す場合が少なくありません。ご家族の受診時に、疾患関連情報と心理社会的支援を的確に提供できるよう、外来準備を進めています。
お手数ですが、ご家族へお渡しした診療情報提供書一式と同じ資料を、事前郵送(下記宛)いただけると幸甚に存じます。 - 当科における診断、検査、治療が一段落した際、定期的なフォローアップを貴施設でお願いすることがあるかもしれません。その際は、診療協力のほど、よろしくお願いいたします。
診療情報などの郵送連絡先
| 住所 | 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 |
|---|---|
| 宛先 | 東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科 吉橋博史 宛 |
| 電話 | 042-300-5111 (代表) (吉橋 PHS:5122) |
診療実績
(対象期間:平成22年4月1日〜平成23年5月31日)
当科開設後、上記対象期間における外来初診総数は332例、このうち他診療科および他医療施設からの外来初診総数は262例でした。
他診療科からの外来初診は214例(82%)、他医療施設からの外来初診は48例(18%:内訳大学病院9例、子ども病院13例、基幹病院・クリニック26例)でした。
初診対応した主な疾患(図1)
遺伝カウンセリングの総数は67例(外来59例、病棟8例)、このうち他医療施設からの依頼は8例でした。
外来初診として受診された方の居住地域(図2)
都外からの受診は47例(16%)でした。
スタッフ
| 氏名 | 役職 | 専門分野 | 主な資格等 |
|---|---|---|---|
| 吉橋 博史 (よしはし ひろし) |
医長 総合診療科 兼務 |
臨床遺伝学、新生児学、遺伝カウンセリング | 臨床遺伝専門医、小児科学会専門医、日本人類遺伝学会評議員 |











