診療科のご紹介


臨床遺伝科

診療科のご紹介

先天性・遺伝性疾患を専門とする小児科です。

先天性・遺伝性疾患(染色体や遺伝子の変化、症候群)の診断、疾患情報の提供のほか、遺伝の話からご家族が抱えうる心理社会的問題への支援をおこなう小児遺伝診療部門です。臨床遺伝科では、「人の多様性を認め合える社会に繋がる遺伝医療」を診療理念とし、わかりにくい遺伝の話をわかりやすく「つたわる遺伝医療」、想定外の出来事に対するご家族の心的負担を「ささえる遺伝医療」に重点をおいた診療を心掛けております。

先天性疾患の頻度と原因

先天性疾患の原因のすべてが、染色体や遺伝子などに生じる遺伝情報の変化(遺伝要因)により発症するわけではありません。出生新生児の約3%に先天性疾患を認めますが、そのうち約半分の原因は不明と言われています。残り半分の原因内訳をみると、約半分(先天性疾患全体の約25%)は遺伝情報の変化が疾患発症と強く関連する染色体異常症単一遺伝子疾患ですが、残り半分は遺伝情報の変化と疾患発症との関連が弱いか無関係の多因子遺伝病曝露因子です。このように、先天性疾患には、遺伝要因より環境要因の影響が考慮されるもの、偶然発症したと考えられ繰り返す可能性が低いものも含まれます。正確な診断にもとづいて原因究明することが大切です。

先天性疾患の頻度と原因内訳(図1)

図1:先天性疾患の頻度と原因内訳

「正確な診断」をめざします。

先天性疾患の診断は、見通しのある子育て、先回りした健康管理、将来の家族計画を考えるときの根拠になります。医師の診たてや各種検査結果にもとづく臨床診断、遺伝情報をふくむ染色体や遺伝子の変化が診断根拠となる遺伝学的診断、どちらの診断においても、正確な診断を支えるための状況証拠が必要です。検査結果以外にも、お子さんの成長や発達の経過、体つきの変化などは、大切な状況証拠のひとつです。正確な診断を得るには、お子さんの育ちを見守り、診断を支える経過や特徴を経時的に確認し、検査結果と合わせて総合的に考えることが重要です。

遺伝情報の特性

遺伝情報はいくつかの特性をもつことが知られています。生涯変わることのない不変性、家系内における共有性、個人を特定しうる特異性をもつため、いま遺伝情報に関する検査をおこなう必要があるのかどうか、いろいろな側面から考えておかなければなりません。先天性・遺伝性疾患の診断では、暫定的であるとしても特定の疾患名が挙げられた時点で、家系内の様々な立場の方が遺伝的問題に直面する可能性があります。遺伝情報の特性が家系内におよぼす影響を無視できないため、診断は慎重に検討される必要があります。

健康と生活の質を保つ医療管理

先天性・遺伝性疾患の診断には、「体質」を診断するという側面があります。「体質」を知ることで、お子さんの子育てや健康管理に役立つ具体的な診療情報を得ることが期待されます。「体質」から想定される「病気」については、予防的・包括的な健康管理や治療につながる可能性があります。一方、その「体質」には生涯向き合う必要のある特性・症状が含まれているかもしれません。診断をお子さんの将来の可能性を広げるために最大限に生かすことをめざし、健康と生活の質を保ち地域社会で安心して暮らすために、各専門診療科との連携、子ども家族支援部門との協働を通じて、医療や福祉に関する最新情報を提供してまいります。

「からだ」と「こころ」を等価に考える医療をめざします。

お子さんの「からだ」のマネージメントと共に、ご家族の「こころ」のケアも子育てには欠かせません。当院はこころ診療部門と連携し、お子さんやご家族のメンタルヘルス・ケアにも努めています。こころ専門医の協力を得ながら、時機を逃さない「こころ」の家族支援にも配慮した遺伝医療を心掛けております。

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは、遺伝に関するあらゆる問題に対し、どうして?なぜ?というお気持ちを抱いている方、具体的な情報を得たい方を対象におこなわれる診療です。ご相談内容や置かれた状況を丁寧にお伺いし、時間をかけた対話を通じて必要とされている医療情報や最新の遺伝学的知見、生活上の問題に沿った情報を提供します。意思決定に悩む場面では、自分らしい生活や将来設計をご自身で描くことができるよう、遺伝学的、心理的な側面からのサポートをめざします。通われているクリニックや当院各診療科からの依頼、ホームページをみて電話されたご相談など、さまざまな窓口からの多様なニーズにお応えしております。以下、相談内容例です。

来談された皆さんのご相談内容

30代のあるご家族(2歳児を育てる3人家族)

「子どもが遺伝する病気をもつと伝えられ説明を受けましたが、よくわかりませんでした。次の妊娠で同じことが繰り返される可能性について、どのように考えたらよいか知りたいです。」

病気や体質がご家族に遺伝するのかどうかのみならず、先天性・遺伝性疾患の考え方や検査内容に関する情報を共有し、家系内情報を確認します。遺伝に関するさまざまな心配や不安についてお伺いしながら、どのような遺伝的問題が考えられるか情報を整理していきます。
来談後の一言
「遺伝性疾患を専門に診ていらっしゃる先生の話を聞く事ができて少し安心できました。」

20代のある男性(ご本人とフィアンセの方)

「私は生まれたときから体つきに特徴があります。将来的には結婚して家庭を築きたいと考えています。子どもに遺伝する可能性はありますか?調べる方法があるならば知りたいです。」

結婚や出産のようなライフイベントは、ご家族の遺伝的内容を見つめ直すよい機会となります。検査ですべてを明らかにできるわけではありませんが、その体質が遺伝性を持つ可能性があるのかどうかについて、ご自身とご家族が情報を整理し共有する場として、遺伝カウンセリングをご活用いただければと思います。
来談後の一言
「よく話を聞いてもらえて嬉しかったです。わかりにくい遺伝の話を、図で分かりやすく説明してもらえたので理解が深まりました。」

30代のご夫婦(妊婦さんとそのパートナー)

「おなかの赤ちゃんについて出生前診断を受けたら、染色体に違いがあると言われました。家族として迎え入れるにあたり、どのような成長、発達を期待することができるのでしょうか?」

出生前診断は赤ちゃんの体質や病態を正確に知るために検討される検査です。当科では、隣接する多摩総合医療センター産科と連携し、おなかの赤ちゃんの状態を想像しやすいよう、小児科の立場から中立的な情報提供をおこなっております。出生前診断で、おなかの赤ちゃんのすべてがわかるわけではありませんが、妊娠中の方、妊娠に備え情報を得たい方、高年妊娠を心配されている方などが対象になると思います。
来談後の一言
「状況は変わりませんが少し先の見通しをイメージできました。今日の話で、赤ちゃんが生まれてくる心構えができればと思いました。また2人で話し合ってみます。」

外来診療時間と週間スケジュール

遺伝科外来と遺伝カウンセリング外来、の2種類の外来枠で対応しております。 

遺伝科外来

診断、遺伝学的検査、定期健康管理に対応しております。各予約枠に初診枠(約30分間)を設定してあります。診療情報提供書(紹介状)を持参してください。

診療時間
午前(9-12時)         二川/武田/吉橋
午後(13-16時) 吉橋 二川/武田
(1,3,5週)
  吉橋 二川/武田

遺伝カウンセリング外来

妊娠前から小児期にわたる遺伝に関する心配や不安に応えるため、遺伝医療の専門職(臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー)により、小児遺伝カウンセリング妊娠前遺伝カウンセリング出生前遺伝カウンセリングを中心におこなっております(約30〜60分間)。家族性腫瘍、神経筋疾患、先天性難聴、遺伝性不整脈など幅広いテーマにも可能な限り対応しております。完全予約制、保険診療対応です(平成27年11月現在)。

診療時間
午前(9-12時)      
午後(13-16時)
水曜日<午後>:出生前遺伝カウンセリング
         ※多摩総合産科受診中の方が対象です。
上記お時間で難しい場合、お急ぎの場合にはお電話の際に遺伝カウンセラーにご相談下さい。 可能な限り配慮させて頂きます。
遺伝カウンセリング外来パンフレット
遺伝カウンセリングの予約方法
  • 連絡先: 当センター代表電話 042-300-5111
  • 遺伝カウンセリング窓口: 認定遺伝カウンセラー 伊藤 志帆(内線5433)
  • お伺いする内容: 相談されたい内容、家系内のご様子、血縁者の健康状態に関する情報。
  • 付記: 相談内容に応じて、適切な遺伝カウンセリング枠や日時をご案内します。遺伝カウンセリングが早急に必要と判断された場合には、可能な限り迅速に対応しております。相談内容が遺伝カウンセリング外来に適しているか判断が難しい場合でも、お気軽にお問い合わせください。

遺伝カウンセリングの様子
遺伝カウンセリングの様子(図2)

こんな症状のお子さんが対象です

先天性・遺伝性疾患をもつお子さんとそのご家族、家系内に認められる遺伝性疾患に関する疾患情報、遺伝性について相談したい方などが対象となります。

主に取り扱っている疾患、治療内容

対象疾患

先天性・遺伝性疾患全般を対象としています。単発の形態異常(多指趾症、口唇口蓋裂、先天性心疾患など)、染色体異常症、症候群、原因不明の多発形態異常/精神発達遅滞、骨系統疾患、先天性難聴、遺伝性不整脈などが含まれます。

おもな疾患名

対応したおもな外来初診(開設後5年間)
  疾患名 件数(例)   疾患名 件数(例)
1 Down症候群 259 11 5pモノソミー症候群 11
2 不均衡型染色体構造異常 43 12 副腎白質ジストロフィー 10
3 22q11.2欠失症候群 22 13 CHARGE症候群 10
4 Williams症候群 20 14 軟骨無形成症 9
5 Kabuki症候群 17 15 Alport症候群 9
6 神経線維腫症1型 16 16 口蓋裂 9
7 Sotos症候群 15 17 過剰マーカー染色体 8
8 FAV/Goldenhar症候群 15 18 Prader-Willi症候群 7
9 Marfan症候群 13 19 遺伝性不整脈 6
10 Turner症候群 12  
5例以下:
Ehlers-Danlos症候群, 18pモノソミー症候群, Beckwith-Wiedemann症候群, Russell-Silver症候群, 羊膜破裂シーケンス, Stickler症候群, 結節性硬化症, 先天性関節拘縮症, 片側肥大, 両親解析, トリプルX, 原因不明の多発形態異常/発達遅滞. 
その他:
Alagille症候群, Craniofrontonasal 症候群, Shinzel-Giedion症候群, Coffin-Siris症候群, Marshall-Smith症候群, 鎖骨頭蓋異形成, 色素失調症, Robinow症候群, PCS/MVA症候群, Osler病, Nail-Patella症候群, Myhre症候群, Mowat-Wilson症候群, Coffin-Lowry症候群, Cornelia de Lange症候群, Gorlin症候群, Goltz症候群, Pitt-Hopkins症候群, Rubinstein-Taybi症候群, Smith-Magenis症候群, Pallister-Killian症候群, 1p36欠失症候群, 4pモノソミー症候群, 22qテトラソミー症候群, トリソミー8モザイク症候群, トリソミー9モザイク症候群, 13トリソミー症候群, 18トリソミー症候群など. 
産科:
染色体異常, NT肥厚, 高年妊娠, 前児先天異常, 胎児形態異常, 罹患胎児の疾患情報など. 

診療内容

診断未確定のお子さんに対する診断を中心に、小児遺伝医療にかかわる診療を幅広くおこなっております。

  • 先天性・遺伝性疾患の診断、検査の提案、結果の説明、次子再発の推定。
  • 疾患特性を考慮した健康管理・治療に関する専門診療科へのコーディネート。
  • 同じ疾患をもつお子さんを育てるご家族間の交流(ピア・サポート)の促進。
  • 高年妊娠、出生前検査に関する最新情報の整理と意思決定の支援。

臨床研究

当科では「ヒアリン線維腫症候群」の臨床研究を行っております。興味のある方はこちらをご参照ください。

医療機関の先生方へ

当科では「家族の成り立ちをささえる遺伝医療」をめざし、遺伝専門職のスタッフが中心となって、十分な遺伝学的配慮のもと、疾患情報の提供および心理社会的な支援に努めております。先天性疾患について原因をはっきりさせたい、なにを注意して育てたらよいのかわからない、遺伝性疾患の兄姉や次の子への影響を知りたいなどの思いを抱かれているご家族が、よい受診時機になると思われます。緊急対応が必要なお子さんやご家族には、受診日時を調整いたしますので、当院代表電話(042-300-5111)からお問い合わせください。

臨床遺伝科の見学・研修について

当院は臨床遺伝専門医制度・認定研修施設です。遺伝医療に興味・関心をおもちであり、臨床遺伝科の見学・研修を希望される医療者の方は、当院代表電話(042-300-5111:吉橋 内線5122)を通じてご相談ください。

研修者数の推移

年度 研修者(名) のべ月数(月)
2010 1 2
2011 4 6
2012 5 8
2013 10(院外2名) 11
2014 11(院外5名) 12
2015 13(院外4名) 13
44 52

関連学会

日本人類遺伝学会
日本遺伝カウンセリング学会
日本小児遺伝学会

診療実績(対象期間:平成22年4月1日〜平成27年3月31日)

診療では、2014年度について、のべ外来受診1764件、外来初診270件(院外初診73件)、遺伝カウンセリング318件(小児期225件、周産期71件、成人期22件)、妊娠前カウンセリング17件でした(図3, )。開設後5年間の累計では、外来初診1261件、遺伝カウンセリング997件であり、院内外からのニーズは高まっています。

依頼元では、院内からの紹介692件(57%)、院外からの紹介400件(33%)、家族の意思による受診114件(10%)でした(図5)。診療科別の依頼元では、外来初診について、新生児科169件(14%)、神経内科115件(10%)、循環器科111件(9%)、内分泌代謝科87件(7%)、総合診療科52件(4%)など、計27診療科(依頼可能な診療科の約90%)から依頼を受けました。入院病棟については、新生児科207件(53%)を最多とする計17診療科から依頼を受けました。今後も、各診療科との診療連携、協働を深め、質の高い専門医療を提供してまいります。

診療実績1(図3)

診療実績2(図4)

依頼元の内訳(図5)

外来初診の居住地内訳(5年間累計)は、三多摩地区977件(77%)、近隣6市333件(26%)、23区69件(5%)、他県226件(18%)でした。東京西部のみならず、都心や他県からのご紹介を広く受けております。

外来初診の居住地域(開設後5年間)(図6)

スタッフ

氏名 役職 専門分野 主な資格等
吉橋 博史
(よしはし ひろし)
医長
診療科責任者
総合診療科兼務
臨床遺伝学、遺伝カウンセリング 臨床遺伝専門医・指導医、
日本小児科学会専門医、
生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医、
日本人類遺伝学会評議員、
日本小児遺伝学会評議員
武田 良淳
(たけだ りょうじゅん)
医員 臨床遺伝学、遺伝カウンセリング 臨床遺伝専門医、日本小児科学会専門医、日本内分泌学会専門医(小児科)
二川 弘司
(ふたがわ ひろし)
サブスペシャリティレジデント 臨床遺伝学、遺伝カウンセリング 日本小児科学会専門医
伊藤 志帆
(いとう しほ)
看護部
認定遺伝カウンセラー
GMRC(Genome Medical Research Coordinator)

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