医療関係者の方へ


抗菌薬適正使用小委員会の取組

抗菌薬適正使用に関するリーフレット

薬剤耐性(AMR)対策アクションプランについて(PDF)

抗菌薬適正使用プログラム(Antimicrobial Stewardship Program, ASP)の取り組み

 抗菌薬の効きにくい細菌を耐性菌といいます。耐性菌は、子供たちの感染症治療を困難なものにさせてしまい、世界中で問題となっています。世界保健機構(WHO)は、耐性菌対策は人類の健康を脅かす重大な危機と警鐘を鳴らし、各国政府に対策を強化するように求めており、サミットなどの国際会議でも重要議案としても話し合われています。日本政府も2014年から耐性菌のサーベイランスを強化しています。

 耐性菌による感染症で苦しむ子供たちを増やさないために、日ごろから抗菌薬を上手に使って耐性菌を作らないようにしていくことが大切です。耐性菌ができる大きな理由のひとつに抗菌薬の使い過ぎがあります。「抗菌薬を上手に使う」ためには、必要な時に、必要な抗菌薬を、必要な量で、必要な期間だけ投与することが重要となります。「必要な時に」とは、ウイルスによる風邪に対して抗菌薬を使用しないことです。風邪の原因となるウイルスに抗菌薬は効きませんし、早く治ることもありません。できるだけねらう菌だけに効く抗菌薬を選ぶことが大事で、効く菌がねらう菌だけに絞られている抗菌薬を狭域抗菌薬といいます。一方、多くの菌を殺してしまう抗菌薬を広域抗菌薬といいます。広域抗菌薬は、ねらっている菌以外の多くの菌に作用するため、それだけ耐性菌を作る可能性が高くなります。菌は抗菌薬による攻撃を受けると、生きのびようとして抗菌薬でも死なないようになり、これが耐性化する理由の一つです。人間の体の中には、600兆個もの菌がいるとされ、その多くの菌は無害で、なかには人の体の機能に必要な良い菌もたくさんいます。抗菌薬を飲んで下痢をすることは、良い菌までも殺してしまいお腹の中のバランスを崩すといわれています。抗菌薬が必要となったときも、なるべく広域抗菌薬よりも狭域抗菌薬で治療して、不要に多くの菌までも殺してしまう広域抗菌薬は、耐性菌を作らないようにするため可能な限り避けることが重要となります。広域抗菌薬は、耐性菌がわかっている状況での治療など、本当に必要なときに限定すべきお薬なのです。
 当院では、病院全体で抗菌薬を上手に使うことが非常に重要な課題であると考え、2010年9月より抗菌薬の適正使用プログラム(ASP)を導入しました。これは英語でAntimicrobial Stewardship Programの頭文字をとったもので、病院が組織的に抗菌薬を上手に使えるようにするプログラムを指し、ASPと呼ばれます。このプログラムでは、感染症科医・薬剤師・臨床検査技師・事務職員が協力し、感染症の診断、微生物検査、抗菌薬投与を上手に行うことができる様々な工夫をしています。このページでは、当院での取り組みを紹介します。

ASPの活動内容

 抗菌薬を上手に使用するためには、適切な感染症の診断が重要となります。当院では感染症科医によるコンサルテーション体制が整っており、感染症が専門でない医師も専門の医師にいつでも相談することができます。各診療科の医師からの相談を受け、必要な検査を提案し、適切な診断のもとに抗菌薬治療を行っています。また、病院内では定期的に感染症の勉強会を行い、感染症診療の質の向上に努めています。

 細菌検査室では、治療方針の決定に重要となる血液、髄液培養の検査を推奨しています。唾液が多く混ざった喀痰や、入院後しばらくたった患者の便の培養検査は特別な理由がない限り受けつけていません。これらの培養は、病気の原因となる菌を検出することはなく、誤った治療をまねく可能性があるからです。また、抗菌薬の選択に影響を与える薬剤感受性試験の結果を、病気の治療に必要な薬剤に限定して報告して、不適切な抗菌薬の選択にならないよう工夫しています。

 薬剤科では、ASPで作成した抗菌薬投与量ガイドラインを基準とし、処方された抗菌薬の投与量、投与間隔などが適切かどうかチェックを行っています。また、バンコマイシンやアミノグリコシド系抗菌薬などの薬剤に関しては、血中濃度を参考に投与量をコンピューターを使ってシミュレーションし、患者さんにとって最適な投与量での治療提案を行っています。

注射の広域抗菌薬の適正使用

 ねらう菌以外の多くの菌に作用してしまう広域抗菌薬を必要以上に使用することは、耐性菌が増加するため望ましくなく、必要な状況をしっかり選んで使うことが重要と考えています。そこで、メロペネム(MEPM)、ピペラシリン/タゾバクタム (PIPC/TAZ)、セフェピム(CFPM)などの注射の広域抗菌薬を使用する際には、感染症科医への事前連絡が必要な体制としました。各診療科の医師と感染症科医が広域抗菌薬の必要性を協働して検討することにより、病院全体での広域抗菌薬の使用量が減少しました。


              ASP発足前後での広域抗菌薬の使用状況の変化

飲み薬の抗菌薬の適正使用

 飲み薬の抗菌薬においても、広域抗菌薬(第3世代セフェム、キノロン、テトラサイクリンなど)を使用する際には、感染症科医師への事前連絡が必要な体制としました。この体制を導入することにより、飲み薬の抗菌薬の使用量も減少しました。

    経口第3世代セフェムの使用状況            経口広域抗菌薬の使用状況

抗菌薬使用量と耐性菌の関係

 ASPの取り組みにより、適正な抗菌薬使用のおかげで当院の広域抗菌薬使用量は減少しました。広域抗菌薬使用量の減少により、耐性菌が抑制される良い影響が出てきています。感受性率のグラフは、数字が高ければ高いほど抗菌薬が効くという、菌の感受性率という値ですが、年がたつ毎に右肩あがりになっており、感受性が良くなってきています。今後も、抗菌薬を上手に使うことで耐性菌を増やさずに、感染症治療が行えるよう努めていきます。さらには、地域全体で耐性菌による感染症を減らしていきたいと考えており、近隣のクリニックの先生方や保護者の皆様にもご理解を頂き、抗菌薬の適正使用を行ってきたいと考えておりますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

              緑膿菌に対する広域抗菌薬の薬剤感受性率

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