こころの病気のミニ事典

認知症

認知症とは、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響がみられる病気です。
認知症の中でいちばん多いアルツハイマー型認知症は、男性より女性に多くみられ、脳の機能の一部が萎縮していきます。血管性認知症は比較的男性に多くみられ、全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は段階的に、アルツハイマー型よりも早く進むことがあります。
初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。しかし、憂うつ、外出をいやがる、気力がなくなった、被害妄想がある、話が通じなくなった、外出すると迷子になる、お金の勘定ができなくなったなどのサインが出てきたときには、専門機関に相談してみましょう。

認知症の症状

正常な「もの忘れ」と認知症の「もの忘れ」の違い

もの忘れには、正常なものと認知症をうたがえるものがあります。正常なもの忘れと認知症によるもの忘れの違いの区別ができればよいのですが、現実にはなかなか難しいものです。 これが全てではありませんが、認知症に気づくためには、次のような目安が役立ちます。

    • もの忘れの為に日常生活に支障をきたしているか

日常生活で重要ではないこと(タレントの名前や昔読んだ本の題名など)を思い出せないのは正常の範囲内ですが、仕事の約束や毎日通っている道で迷うなどの場合は認知症のサインかもしれません。

    • 本人が忘れっぽくなったことを自覚しているか

自分でもの忘れの自覚がある場合は正常の範囲内ですが、もの忘れをしていることに気づかず、話の中でつじつまを合わせようとするようになるのは認知症のサインかもしれません。

    • もの忘れの範囲は全体か

経験の一部を忘れるのは正常の範囲内ですが、経験全体を忘れるのは認知症のサインかもしれません。

正常なもの忘れ 認知症のもの忘れ
もの忘れの範囲 出来事などの一部を忘れる
(例:何を食べたか思い出せない)
出来事などのすべてを忘れる
(例:食べたことそのものを忘れる)
自覚 もの忘れに気づき、思い出そうとする もの忘れに気づかない
学習能力 新しいことを覚えることができる 新しいことを覚えられない
日常生活 あまり支障がない 支障をきたす
幻想・妄想 ない 幻想・妄想をすることがある
人格 変化はない 変化する(暴言や暴力をふるうようになる、
怒りやすい、何事にも無関心になるなど)

※厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」認知症のページより引用。(朝田隆著:「家族が認知症と診断されたら読む本」日東書院p.33より改変)

軽度認知症の特徴・サイン

認知症のサインまではいかなくても、少しだけ正常のもの忘れが強いと感じたら、軽度認知障害の可能性も考えられます。
軽度認知障害の特徴としては、下記の4つが挙げられます。

  • ほかの同年代の人に比べて、もの忘れの程度が強い
  • もの忘れが多いという自覚がある
  • 日常生活にはそれほど大きな支障はきたしていない
  • もの忘れがなくても、認知機能の障害が1つある

この場合の認知機能とは、失語・失認・失行・実行機能のことです。

  • 失語:言葉の障害(言葉が理解できない、言おうとした言葉を言うことができない、など)
  • 失認:対象を正しく認識できない:知り合いの顔、色、大小などを認識できない、など
  • 失行:くわえたタバコにライターの火をつけられない、服を着ることができない、茶葉とお湯と急須を使ってお茶を入れることができない、など
  • 実行機能の障害:計画をたててその計画通りに実行していくなどができない

同世代と比べてもの忘れの程度が強く、こうした認知機能にも障害があると感じられたら、軽度認知障害のサインかもしれません。

認知症の知識

認知症は、正常であった記憶や思考などの能力が脳の病気や障害の為に低下していく障害です。認知症にはいくつかの種類があります。いちばん多いのがアルツハイマー型認知症で、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。
次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。かつて日本では、血管性認知症が多かったのですが、このタイプは減ってきています。また、アルツハイマー型に血管性認知症が合併している患者さんも多くみられます。

85歳以上は4人に1人が認知症に

年をとるほど、認知症になりやすくなります。
65歳以上70歳未満の有病率は1.5%、85歳では27%に達します。日本における65歳以上の認知症患者はすでに240万を超えているという推計もあります。さらに団塊世代が65歳以上になる2015年には250万人、2020年には300万人を超すと推定されています。高齢社会の日本では認知症が今後ますます重要な問題になることは明らかです。

若年性認知症もある

若くても、脳血管障害や若年性アルツハイマー病の為に認知症を発症することがあります。65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。若年性認知症の患者数は、「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」(主任研究者 筑波大学大学院人間総合科学研究科 朝田隆教授)によると、3.78万人と推計されています。

正常でもない、認知症でもない、軽度認知障害で早期発見・早期治療を

認知症ほどではないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近注目されています。軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅らせるなどの効果が期待されています。
認知症ではなさそうだと思っても、もの忘れの程度がほかの同年齢の人に比べてやや強いと感じたら、念のために専門医を受診することが早期発見・早期治療につながることになります。

認知症に関するイベント

  • 認知症疾患医療センター…東京都立松沢病院では、東京都の指定を受け、平成24年4月より認知症疾患医療センターを開設いたしました。「認知症疾患医療センター」とは、認知症の患者さんとご家族が住み慣れた地域で安心して生活していけるように、① 認知症の鑑別診断と治療、② 認知症に伴う問題行動や合併症の治療、③ 地域連携の促進、④ 専門医療相談、⑤ 専門医療や地域を支える人材の育成、などの役割を持っています。スタッフ一丸となり、この目標達成のため日々努力しています。
  • もの忘れ家族教室…認知症の患者様を介護しているご家族や支援者の方に、認知症の医学情報や対応方法、社会資源について情報提供させていただきます。
  • もの忘れよろず相談…認知症の患者様ご本人、患者様ご家族、その他認知症に係る方を対象に、受診・介護・対応法・経済的質問などのご相談を受け付けています。