松沢病院について

2015.01.06

Vol.07  新年を迎えて 2015年1月

 松沢病院は、新しい診療棟に移って3度目のお正月を迎えました。皆様は、どのような新年を迎えていらっしゃるでしょうか。2015年、松沢病院は、昨年に引き続き、『患者さんに選ばれる病院』を目指して努力を続けてまいります。

 2012年7月、私が病院の運営を引き継いだとき、『民間医療機関からの依頼を門前払いにしない』という目標を掲げて仕事を始めました。これは、いわば数の問題でした。『依頼を断っていないかどうか』を評価することは難しいことではありません。2013年度の病床稼働率は89.6%(前年度比+6.7%)、1日当たり入院患者798人(同+60人)、平均在院日数86.4日(同-6.9日)、外来患者411人(同+42人)という数字は、2012年度から13年度にかけて、松沢病院が入院依頼や外来紹介を受け入れ続けた結果、達成された数字です。ちなみに、この間、外来診療の予約制を導入し、診療待ち時間は都立病院の中で最も短くなりました。

 一方、『患者さんに選ばれる病院』になったかどうかはどうやって判断すればいいのでしょう。医療の質、ということがしばしば言われますが、病床稼働率などの経済指標とは違って、質の評価を客観的に行うことは決してたやすいことではありません。特に、精神科においては様々な事情でとても難しいことです。松沢病院で毎月行われている、退院患者さんのアンケートで、入院について『満足』という回答は、ご家族では74.5%ですが、患者さんでは52.3%です。回収率は全体で58.6%、患者さんの回答率は40.4%ですから、残る60%を意見保留と考えれば、積極的に入院治療に『満足』と感じている患者さんは、全体の20%強に過ぎないということになります。ここで明らかになるのは、ご家族の満足度と患者さんの満足度に大きな開きがあることです。患者さんの精神症状で苦労をしているご家族にとっては、入院治療をしてもらえただけでありがたかった、ということが少なくない一方で、患者さんにしてみれば、不本意に入院を強制され、不自由な生活を強いられ、服薬を強制されるわけですから、なかなか『満足』とは言えません。患者さんの希望と、ご家族、周囲の人々の希望が、必ずしも一致しないということが精神医療の質の評価を難しくする一つの要因です。

 OECDは日本の精神医療について、医療の質を評価する指標が調査されていないことがそもそもの問題であると指摘しています。自治体病院協議会では、医療の質を評価する指標を公表する試みを開始し、精神科病院もこれに参加しています。松沢病院は今のところ、こうしたプログラムに参加していませんが、2014年度から公開している、院内で起こるインシデント・アクシデント報告、隔離・拘束の実態等の情報に加え、今年からは毎月の退院患者さんアンケート、2013年度から行っている、全入院患者さん、ご家族に対するワンデイ調査、外来患者さんのアンケート結果などを順次、ホームページに公開していきます。

 経営指標として公表している在院日数や入退院患者数、外来初診数、外来診療件数等も、見方によっては診療の質を評価する指標になりえます。この他、薬剤科や栄養科のパフォーマンス、デイケアからの社会復帰率なども重要な指標になるでしょう。

 自分たちの仕事を評価する、という意味では2013年度から行っている第三者評価委員会にも重要な役割を担っていただいています。これは、院外の医師、看護師、弁護士からなり、松沢病院の病棟を視察し、評価していただく制度です。患者さんやご家族を対象としたアンケートと並行して、第三者の評価をいただくことが目的です。

 これまで行ってきた上記のような試みに加えて、2015年には、院内に診療の質を評価するための委員会を設置して評価指標を選びだすための検討を開始します。具体的な指標の検討は、そのこと自体が『診療の質』とは何か、という問題を考える上で重要なプロセスです。今年も、皆様のご支援を得ながら、精神疾患に苦しむ患者さんのために、すこしでも質の高い精神医療を提供できるよう、職員一同、力を合わせてがんばろうと思います。