松沢病院について

2012.07.01

Vol.01着任のご挨拶

岡崎祐士前院長の後任として、7月1日から都立松沢病院長を務めることになりました。東京都の精神医療を充実させるために、全職員と協力して頑張っていこうと思います。

私は、1980年に大学を卒業し、1982年春から1991年まで、松沢病院に勤務していました。研修を終えたばかりの私が、松沢病院に着任して初めて受け持ったのは、20年、30年の長い入院歴のある患者さんを中心とした慢性病棟でした。そこで、私は、当時の院長だった秋元波留夫先生からYAVIS症候群になってはならない、という訓辞を受けました。YAVISというのは、若く(young)、魅力的で(attractive)、活動的(vivid)、知的で(intellectual)経済的にも恵まれた(successful)という意味です。秋元院長が教えてくださったのは、こうした、医者にとって心地よい患者だけを相手にする精神科医になってはならないということでした。

私は今回、30年ぶりに、同じ病棟に入って、旧知の患者さんから声をかけられて愕然としました。30年間、退院することなく、松沢病院で過ごしていた患者さんが何人もいたのです。私が、医師としてのキャリアを積み、家庭を作り、友人たちと過ごした30年、患者さんが松沢病院の病棟の片隅で、1人で送った30年・・・患者さんの人生の重みを慮り、精神科医の無力さを自覚して、謙虚に努力せよという、秋元院長の教えの本当の意味が、ようやく身に染みて分かったような気がします。It’s too late now. ではありますが。

様々な薬が開発され、早期診断、早期介入が可能になり、精神疾患の予後は飛躍的によくなりました。しかし、精神の病の前に、精神医学の力は依然として非常に小さく、この病を抱えて生きていく患者さんの人生は、依然としてとても厳しいものです。松沢病院長として、こうした厳しい現実を見据えながら、無力ながらも患者さんのそばに寄り添う医療を展開していきたいと決意しています。よろしくお願い申し上げます。