代表電話番号03-3444-1181

予約専用電話番号03-3446-8331

各診療科・部門紹介

脊椎疾患

頚椎症性脊髄症・神経根症

脊柱には脊柱管と呼ばれる管があり、頚椎では脊柱管の中を中枢神経である脊髄(頚髄)が通っています。その脊髄から枝分かれし、椎間孔と呼ばれるトンネルを通って頚椎の外へ出ていく末梢神経を神経根と呼びます。加齢や頚椎に対する長年の機械的ストレスに伴い、頚椎の関節にある軟骨が削れて骨の棘ができたり(頚椎症)、椎間板が変性したり、脊柱管周囲の靭帯が分厚くなったりすると脊柱管や椎間孔が狭くなります。その結果、脊髄が圧迫されて発症する病態を頚椎症性脊髄症、神経根が圧迫され発症する病態を頚椎症性神経根症と呼びます。頚椎症性脊髄症では手足のしびれ、手指を使った細かい作業ができなくなる障害(巧緻性障害)、歩行障害、尿閉・失禁(膀胱直腸障害)などがみられ、頚椎症性神経根症では頚部や肩甲骨周囲の痛み、上肢の痛みやしびれなどがみられます。頚椎症性脊髄症の進行例は手術が必要となり、主に首の後ろ側から神経の通り道をひろげる手術(脊柱管拡大術)が適応となります。頚椎症性神経根症はほとんどの例が保存治療(内服、頚椎カラー、神経ブロック、牽引など)で改善していきますが、いっこうに症状が良くならなかったり、筋力低下が進行する場合には後方椎間孔拡大術や前方除圧固定術などを検討することがあります。

<頚椎症性脊髄症のMRI画像例>

頚椎を横から見た画像で、頚椎(Cervical spine)をCで表記しています。脊柱管の中の白い部分が脳脊髄液、黒い部分が脊髄ですが、C3/4、C4/5、C5/6では前方と後方からの圧迫により脳脊髄液の通りが悪くなり、脊髄が圧迫されています。

<脊柱管拡大術のCT画像>
手術により脊柱管の前後の径は9mmから15mmに拡大されています。

腰部脊柱管狭窄症および脊椎すべり・変形

腰部で脊柱管が狭くなった病態を腰部脊柱管狭窄と呼びます。加齢に伴い脊柱管周囲の骨や椎間板が変形して脊柱管内部に突出したり、脊柱管内部の靭帯(黄色靭帯)が分厚くなったり、さらには脊椎すべりが発生したりすると脊柱管は狭くなり、脊柱管を通る神経が圧迫されます。典型的な症状として、歩き始めてしばらくすると下肢の痛みやしびれがひどくなって歩けなくなり、座って休むとまた歩き出せるという「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」がありますが、病状が進行すると下肢の筋力低下・麻痺や、排尿・排便障害が発生することがあります。軽症例では内服や神経ブロック、リハビリテーションなどの治療で改善することがありますが、下肢の筋力低下や歩行障害が進行したり、排尿・排便障害が出現する場合には手術が検討されます。手術の第一の目的は神経に対する圧迫を取り除くこと(除圧術)ですが、脊椎の不安定性が強い場合は固定術を、さらに、すべり・側弯・後弯など変形を伴いながら神経が圧迫されている場合は変形を矯正したうえで固定する術式を併用する場合もあります。当科では内視鏡を用いて小さい皮膚切開で除圧を行う手術からスクリューなどを用いる脊椎インストゥルメンテーション手術まで、患者様それぞれの病態に則した術式で手術を行っています。

<L4/5脊柱管狭窄症のMRI画像例>

左の画像:腰椎を横から見た画像で、腰椎(Lumbar spine)を L で表記しています。L4/5では前方と後方からの圧迫により脳脊髄液の通りが悪くなり、神経(馬尾神経)が圧迫されています。
右上の画像:L3/4での正常な脊柱管の断面を示しています。
右下の画像:L4/5で脊柱管の断面積が小さくなり(脊柱管狭窄)、神経が圧迫されています。

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板は外縁部分を構成する線維輪という靱帯様組織と、中心部に含まれる柔らかい髄核という組織から成り立っていますが、線維輪に亀裂が生じ、中にある髄核が外に押し出された状態を椎間板ヘルニアと呼びます。飛び出した髄核が神経を圧迫することで下肢の痛み・しびれ(坐骨神経痛)が生じます。症状が進行すると神経麻痺により足に力が入りづらくなったり、動きにくくなってつまずいたりすることもあります。症状はヘルニアが発生する場所によっても異なり、まれに馬尾神経と呼ばれる腰部にある神経が強く圧迫されると、排尿、排便障害が起こり緊急手術が必要となります。薬剤の投与や神経ブロックなどの保存治療で自然軽快していくことが多いですが、長期にわたり症状が改善しない場合や神経症状が強い場合は手術が検討されます。また、本疾患は20~40歳代の働き盛りの男性に発症することが多く、早期職場復帰をご希望されるようなケースでも手術を行うことがあります。当科では小切開をおき内視鏡を用いてヘルニアを摘出する手術(Micro Endoscopic Discectomy: MED)を行っています。

<L4/5腰椎椎間板ヘルニアの例>

左のMRI画像:L4/5椎間板の中の髄核が脊柱管方向に脱出し、さらに頭側の方向へ押し出されています。
真ん中のMRI画像:ヘルニアにより左側の神経が圧迫されています。
右の写真:内視鏡手術により摘出された巨大なヘルニアです。

<MED術後の創部>

傷口が小さいため従来の切開手術と比べ術後の痛みが軽く、回復も早いのが特徴です。

.

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折

骨粗鬆症が進むと、尻もちや転倒、あるいはちょっとした日常動作や衝撃で背骨が骨折してしまうことがあります。折れた背骨が不安定となるため、寝返りをうつときや起き上がるときに耐えがたい背中の痛みを生じるのが特徴です。コルセットを装着し、骨粗鬆症に対する適切な治療を行えば、通常は2カ月程度で治癒していきますが、約10人に1人は骨が癒合せず2ケ月以上経過してもさらに骨が潰れることがあり、この病態を偽関節(ぎかんせつ)、あるいは遅発性椎体圧潰と呼びます。骨の潰れ方がひどい場合は背骨の変形や姿勢異常、消化器系・呼吸器系の障害を起こすことがあるので、痛みが長期間続いたり背骨の変形が進む場合は注意が必要です。また、骨折の骨片が脊柱管内部や椎間孔と呼ばれる神経の通り道に突出して坐骨神経痛や神経麻痺を起こすこともあります。当科では病状に応じて、セメントを椎体の中に入れて安定化させる経皮的椎体形成術(BKP)、神経除圧術、スクリューを用いた後方除圧固定術などを行っています。

<経皮的椎体形成術(Balloon kyphoplasty: BKP)の例>

背中の2箇所に5mmの皮膚切開をおき専用の風船で椎体内部を拡げた後、セメントを充填(じゅうてん)します。

<後方除圧固定術の例>

左側の術前レントゲン画像:L3の骨が新しく圧迫骨折をおこし、下肢の神経症状が出現していました。なお、L1も潰れていますが古い骨折で治癒後の骨折でした。
右側の術後レントゲン画像:後方から椎弓という骨を削って神経の圧迫を解除し、スクリューで上下の椎体を固定しました。L3椎体の内部に人工骨を詰めて補強する「椎体形成術」も同時に行っています。

脊椎外傷・脊髄損傷

交通事故やスポーツによる事故、高所からの転落などで大きな外力が背骨に加わり、脊椎の骨折や脱臼、椎間板や靭帯の破綻などを伴いながら脊髄が損傷されるケースや、高齢な方が軽い外傷で首や頭を打った結果、骨折を伴わずに頚髄を損傷する「非骨傷性頚髄損傷」のケースがあります。高齢化が進む近年では後者が増加傾向で、頚髄損傷全体の6〜7割が非骨傷性と言われています。これは加齢に伴う頚椎の変形(変形性脊椎症)や脊柱管周囲の靭帯の骨化(黄色靭帯骨化・後縦靭帯骨化)によって脊髄の通り道が狭い箇所が受傷前から存在し、この部位に外傷が加わることにより発症します。
脊髄損傷部位が頚髄の場合は上肢・体幹・下肢の麻痺を生じ、胸髄以下の場合は体幹部・下肢の麻痺を生じます。また頚髄が損傷されると、上肢・下肢の麻痺に加え、呼吸障害を合併することもあり、重症例では人工呼吸管理や気管切開を要することがあります。そのほか、脊髄損傷では循環管理・消化器管理・尿路管理などさまざまな全身管理が必要となることが多く、救命救急センターと連携しながら治療を行います。脊椎の骨折や脱臼により強い不安定性を生じている場合や、脊髄の損傷があって圧迫が高度である場合には手術(損傷脊椎の整復・固定、脊髄の除圧)が検討されます。

最終更新日:2018年2月28日