食事療法のすすめ方 脂質異常症(高脂血症)の食事
高脂血症(脂質異常症)とは
高脂血症(脂質異常症)とは、血液中の脂質が異常値を示す状態をいいます。
血液中の脂質にはLDLコレステロール(悪玉)、HDLコレステロール(善玉)、トリグリセライド(中性脂肪)などがあります。
LDLコレステロールは動脈硬化を進展させ、HDLコレステロールは血管壁にたまった、余分なコレステロールを取り出し、動脈硬化をおさえる働きがあります。トリグリセライドについても値が高いと心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを発症する危険性が高まります。
高LDL血症、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症といった血液中の脂質の異常を総称して「脂質異常症」といいます。
血液中の脂質の異常があっても自覚症状がほとんどない場合が多いのですが、放置すると血管の壁に血液中のコレステロールが付着して動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を起こしやすくなります。
肥満、特に内臓脂肪型肥満があり、血液中の脂質の異常に血糖値や血圧が高めな状態が重なると、動脈硬化性疾患の危険性が高くなるため「メタボリックシンドローム(代謝異常症候群)」と呼ばれています。メタボリックシンドロームの治療には、食事・運動といったライフスタイルを改善し、肥満を解消することが重要となります。
脂質異常症の診断基準
脂質異常症の診断基準は以下のとおりです。この診断基準により脂質異常症と判断された場合は、将来の動脈硬化性疾患を予防するために生活習慣の改善を行う必要があります。
脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007版)
- 高LDLコレステロール血症 検査値:LDLコレステロール ≧ 140mg/dl
- 低HDLコレステロール血症 検査値:HDLコレステロール < 40mg/dl
- 高トリグリセライド血症 検査値:トリグリセライド(中性脂肪) ≧ 150mg/dl
※ 計算式によるLDLコレステロール値の求め方
LDLコレステロール値=総コレステロール値−HDLコレステロール値−トリグリセライド(中性脂肪)値×1/5(Friedewaldの式:ただし、トリグリセライド(中性脂肪)が400mg/dl以下の場合に限る)
食事療法のポイント
高脂血症(脂質異常症)の食事療法は、第一段階として一日に摂取するエネルギー量を適正にし、摂取する炭水化物、たんぱく質、脂肪の配分をバランスのとれたものに改善します。肥満がある場合は肥満の是正が重要です。
適正なエネルギーをとりましょう 肥満症の食事のページへ
エネルギーをとりすぎると、肝臓でのコレステロールの合成が促進されます。余分なエネルギーは肝臓でトリグリセライド(中性脂肪)に合成され、血液中のトリグリセライドも高くなります。逆に消費エネルギーの方が多いと、トリグリセライド分解されエネルギー源として使われます。肥満のある場合は、標準体重(※)に近づけましょう。
※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
(日本肥満学会の式)
良質なたんぱく質を適量とりましょう
魚・肉・大豆製品・卵など良質なたんぱく質を含む食品は、毎食1品はとるようにしましょう。
LDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やすためには、脂肪の多い肉や卵を減らし、魚や大豆製品を選ぶようこころがけましょう。
脂肪の質と量に注意しましょう
脂質からのエネルギー量は全体の20〜25%とし、動物性脂肪は控えるようにしましょう。
動物性脂肪は控えましょう
- 牛乳などの乳製品や卵は指示量に合わせてとりましょう。
- 肉は脂肪の少ない部位を選びましょう。
- 市販食品や加工食品は、動物性脂肪を使っているものが多いので注意しましょう。
コレステロールを多く含む食品を控えましょう
食品からとるコレステロール量は1日300mg以下にしましょう。コレステロールは卵類、レバーやモツなどの内臓類に多く含まれていますので控えましょう。魚の中でも内臓と魚卵はコレステロールが多いので、しらす干しのような小魚や、丸ごと食べるメザシやわかさぎ、タラコ、数の子、イクラなどの魚卵あるいは白子、塩辛などは一回に食べる量と頻度に注意が必要です。
アルコール飲料を控えましょう
アルコールは1日25g以下が適量とされていますが、他の合併症などにもよります。
アルコール20〜25gに相当するアルコール飲料
- ビール…中瓶1本(500ml)
- 日本酒…1合(180ml)
- 焼酎…0.5合(90ml)
- ウィスキー…ダブル1杯(60ml)
- ワイン…グラス2杯(200ml)
※ これは、あくまでも目安であり個人差があるので、注意してください。
食物繊維は十分にとりましょう
食物繊維は、血管壁へのコレステロールの沈着を防ぎます。野菜、海草、きのこ類などを毎食欠かさず十分にとりましょう。また、野菜に含まれるβ−カロテン、ビタミンCはLDLコレステロールの酸化変性を防ぎます。野菜の1日の摂取量の目安は350g以上です。そのうち半分をにんじん・小松菜・ブロッコリーなどの緑黄色野菜から摂取するようにしましょう。

甘いもののとりすぎに注意しましょう
甘いもののとりすぎはトリグリセライド(中性脂肪)を増加させます。砂糖の多い菓子類、し好飲料は控え、料理に使用する砂糖も少なめにしましょう。
また、果物にも糖分が含まれ甘いものの1つとして思い浮かびますが、ビタミンや食物せんいが豊富であるという点では優れた食品です。1日の適量※を目安にとりましょう。
※ 1日当りの果物摂取の目安量・・・みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本
特に夜寝る間際の飲食はやめましょう。
食塩は控えましょう 高血圧症の食事のページへ
食塩のとりすぎは、血圧を上げる要因となります。高血圧症を合併すると動脈硬化が進みます。薄味に慣れることはとても大切です。
以上のような食事療法で血清脂質が目標値に達しない場合には、「LDLコレステロールが高いタイプ」、「トリグリセライド(中性脂肪)が高いタイプ」、「どちらも高いタイプ」にあわせた第2段階の食事療法へ進みます。
1 LDLコレステロールが高いタイプの食事療法のポイント(第2段階)
脂肪の質と量に注意しましょう
脂質からのエネルギー量は全体の20%以下としましょう。
多価不飽和脂肪酸(P):一価不飽和脂肪酸(M):飽和脂肪酸(S)の比率は、3:4:3 が望ましいとされています。
(P)が多い食品は、植物油や魚油(イワシ、さんまなど)、(M)が多い食品はオリーブ油です。
どちらも血液中のLDLコレステロールを下げる働きがありますが、エネルギーが高いので、決められた量の範囲でとりましょう。
(S)はバターやラードなどの動物性脂肪、肉の脂身に多く含まれ、LDLコレステロールを増やします。これらの食品は控えましょう。
コレステロールを多く含む食品を控えましょう
食品からとるコレステロール量はさらに制限し、1日200mg以下にしましょう。
卵は1日1個以下とし、魚卵、小魚、レバー、うなぎ等も控えましょう。
2 トリグリセライド(中性脂肪)が高いタイプの食事療法のポイント(第2段階)
アルコール飲料は制限しましょう
アルコール摂取は原則として禁止です。
炭水化物のとり方に注意しましょう
ごはん、パン、めん類などの主食は食事の基本として毎食に、また、いも類や果物も食物繊維やビタミンを豊富に含むので、毎日の食生活には欠かせない食品です。
しかし、これら炭水化物を主体とした食品のとりすぎはトリグリセライドを増やしますので、適量をこころがけましょう。
- ごはんのおかわりは控えめにしましょう。
- いも類はじゃが芋1日小1個程度にしましょう。
- 果物は1日80kcal程度(みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本程度)にしましょう。
また、砂糖は料理に使用する調味料のみにし、和菓子や洋菓子、清涼飲料水など甘いものは可能な限り控えましょう。
3 LDLコレステロール・トリグリセライド(中性脂肪)が共に高いタイプの食事療法のポイント(第2段階)
LDLコレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)が共に高い場合は、1及び2のポイントすべてに気をつけるようにしましょう。
お役立ちレシピ ~魚や豆を利用して~
日常生活の注意
1 適度な運動をしましょう
運動は、体脂肪を燃焼させ、肥満やトリグリセライド(中性脂肪)値の改善に効果的です。またHDLコレステロール(善玉)を増加させます。なお、運動を始める前にはメディカルチェックが必要です。どの程度の運動(運動の強さ、時間、頻度など)が良いか、医師に相談しましょう。
2 タバコはやめましょう
タバコは、HDLコレステロール(善玉)を減少させ、動脈硬化を早めます。