食事療法のすすめ方 高血圧症の食事


血圧とは

血圧とは、文字通り、血管の中を流れる血液が血管壁に与える圧力のことです。その値は、二つの要因で決まります。一つは血液量、つまり血管の中を流れる血液の量です。もう一つは、太い血管から細い血管へ血液が入り込むことによって起こる抵抗によってです。その抵抗は、血管の内腔の状態によって決まります。
血液は心臓のポンプ作用によって全身の血管に押し出されてきます。心臓が収縮するときに最も血圧が大きくなり、このときの血圧を「収縮期血圧」(または最高血圧)といいます。また、逆に心臓が弛緩するときの血圧は最小となり、このときの血圧を「拡張期血圧」(または最低血圧)といいます。
高血圧は、糖尿病(耐糖能異常)、内臓脂肪型肥満、高脂血症などの生活習慣病と重複することで動脈硬化の進行を早めます。これらをメタボリックシンドローム(代謝異常症候群)といい、自覚症状がないまま徐々に動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳血管障害を引き起こす危険が高まります。

 

血圧を上げる要因

血圧は、色々な要因によって上がります。

食塩のとりすぎ

食塩をとりすぎると、尿中へナトリウムを排泄するという腎臓の能力を上回り、血液中にナトリウムがたまります。ナトリウムがたまると、水分を体に蓄えてナトリウム濃度を調節しようとする働きがあるため、循環血流量は増加し、血圧は上がります。

肥満

標準体重を10%以上超えて体重が増えてくると、血圧は上昇してきます。肥満は医学的には、体の構成成分の中で脂肪が異常に増加した状態をいいますが、そのため末梢の細い血管は多量の脂肪で圧迫されます。その結果、流れ込む血液が抵抗を受け、血圧は上昇します。標準体重に近づけることで血圧も下がります。

運動不足

わたしたちの体は、食べ物から得た炭水化物をブドウ糖に変え、それをエネルギーとして利用していますが、ブドウ糖を利用するときには、インスリンというホルモンが必要になります。日頃運動をして筋肉をよく使うと筋肉はインスリンをあまり使わないでブドウ糖の利用を高めます。しかし、逆に日頃の運動が不足していると、インスリンの働きが悪くなります。こうなると、働きが悪くなったことを量でカバーしようとして、インスリンが過剰に分泌されるようになります。インスリンが過剰に分泌されると、腎臓での尿中へのナトリウム排泄を抑えてしまう結果となり、体内のナトリウムが増えて、血圧が上がります。
毎日の歩く距離を増やすだけでも、インスリンの働きは改善され、血圧は下がりやすくなります。

精神的ストレス

精神的ストレスは血圧を一時的に上昇させます。しかし、ストレスが繰り返されると、交感神経の緊張状態が続いて血管は収縮し、血圧は高い状態(高血圧症)を持続するようになります。

喫煙

ニコチンは交感神経の緊張を高めるため、血管は収縮し、血圧が上昇しやすくなります。

 

高血圧症とは

高血圧は症状であって、それだけでは疾患ではありません。血圧が少し高いくらいでは、ほとんど病気の症状はありませんが、高血圧状態を長期間放置しておくと、脳卒中などの脳血管疾患や心臓病、腎疾患など多くの疾病の誘因になります。

血圧の分類 (日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009年版」より)
  収縮期血圧(mmHg)   拡張期血圧(mmHg)
至適血圧 120未満 かつ 80未満
正常血圧 130未満 かつ 85未満
正常高値血圧 130〜139 または 85〜89
軽症高血圧 140〜159 または 90〜99
中等症高血圧 160〜179 または 100〜109
重症高血圧 180以上 または 110以上
収縮期高血圧 140以上 かつ 90未満
降圧目標(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009年版」より)

血圧をどこまで下げるのか、の降圧目標は次のとおりです。

  • 高齢者(65歳以上) → 140 / 90 mmHg未満
  • 若年・中年者 → 130 / 85 mmHg未満
  • 糖尿病患者・腎症患者 → 130 / 80 mmHg未満
  • 脳血管障害患者 → 140 / 90 mmHg未満

高齢者は従来年齢により幅がありましたが、年齢を問わず可能であれば 140/90 mmHg未満に降圧するのが目標です。
また、糖尿病患者・腎障害患者さんは、合併症や腎障害の進行を防ぐためにも 130/80 mmHg未満が望ましいでしょう。

高血圧の種類

高血圧は、原因のわからない本態性高血圧と、原因がはっきりわかっている二次性高血圧の二つに分けられます。

本態性高血圧

原因のはっきりしない高血圧症で、約9割の患者が本態性高血圧と診断されています。原因が特定できないとはいえ、血圧を上げるいくつかの要因が複雑にからみあって発症すると考えられています。
血圧を上昇させる要因には、大きく分けて遺伝的素因と環境因子に分けることができます。

  • 遺伝的素因
    体内にナトリウムがたまりやすい体質、交感神経の緊張が強まりやすい体質など
  • 環境因子
    食塩のとりすぎ、肥満、運動不足、精神的ストレス、喫煙など

二次性高血圧

高血圧の原因となっている病気がはっきりしているもので、高血圧は、その病気の一つの症状として出てくるものです。原因疾病としては、腎性、内分泌性、血管性、薬物によるものなどが上げられます。

食事療法のポイント

1 食塩を制限します

食塩制限

食塩のとり過ぎは、血圧を上げる大きな要因です。献立・調理・食品の選び方の工夫をし、減塩を心がけましょう。(一日に6g未満としますが、個人差がありますので、どの程度に制限すればよいかは、必ず主治医に確認してください。)

  • 干物・ハムなどの塩蔵品や漬物・佃煮などは控えましょう。
  • レモン・酢などの酸味やしいたけ・のりなどの風味がある食品を利用しましょう。
  • めん類のつゆは、飲まないようにしましょう。
  • 調味料は、計量スプーンで計るようにしましょう。

食品に含まれる食塩量(食品量は可食部です)
食品名 重量(めやす) 食塩量 食品名 重量(めやす) 食塩量
食パン 60g(6枚切り1枚) 0.8g たくあん漬 20g 0.9g
茹でうどん 220g(1玉) 0.7g 白菜キムチ 30g 0.7g
あじ干物 60g(中1枚) 1.0g 梅 干 6g(1個) 1.3g
すじこ・たらこ 10g(小さじ2杯) 0.5g のり佃煮 10g(小さじ2) 0.6g
はんぺん 60g(1枚) 0.9g ビーフカレー(レトルト) 210g(1袋) 2.8g
いか塩辛 20g(大さじ1杯) 1.4g 冷凍しゅうまい 17g(1個) 0.2g
ハム(ロース) 20g(1枚) 0.5g 即席ラーメン(調味料を含む) 100g(1袋) 6.4g

2 エネルギーをとり過ぎないように

肥満は血圧の上昇に影響します。穀類・菓子及び嗜好飲料などの糖分と揚げ物・調理油などの油脂のとり過ぎに注意しましょう。

 

3 栄養のバランスを考えて3食規則正しく食べます

毎食「主食・主菜・副菜」をそろえるよう心がけることで、バランスを保ちましょう。

  • 主食(炭水化物を多く含む食品)
    主食(ご飯、パン、めん類など)は、量を決めて毎食食べましょう
  • 主菜(良質たんぱく質をを多く含む食品)
    たんぱく質は血管を丈夫にします。
    魚・脂肪の少ない肉・卵・豆腐などの良質のたんぱく源を毎食一品以上食べましょう。
  • 副菜(ビタミン・ミネラル・食物せんいを多く含む食品)
    新鮮な野菜・果物には、ビタミン・ミネラル・食物繊維がたくさん含まれています。中でも特にカリウムは、余分なナトリウムを尿中に排泄し、血圧を下げるのに効果があるので十分にとりましょう。
    ただし、血糖値や中性脂肪値が高い場合には、果物は取りすぎないようにしましょう。

4 動物性脂肪をひかえ、植物性脂肪を適量に

動物性脂肪(バター・肉の脂身など)は、血液中のコレステロールを増やし、植物性脂肪には減らす働きがあります。

5 アルコール飲料は医師に相談を

アルコール飲料

アルコールは血管を広げる働きがあり、飲酒直後には血圧を低下させますが、飲みすぎると逆に血圧を上昇させる働きがあります。また、エネルギーのとり過ぎにもつながり、肥満を助長させることにもなります。くわしい量は医師に相談しましょう。


6 外食は、できるだけ控えることが望ましいですが、利用する場合は食塩や栄養のバランスを考えて選びましょう。

  • めん類のつゆや味噌汁、スープなどは、飲まないようにしましょう。
  • 味付けご飯(ピラフ、チャーハン、炊き込みご飯など)や、カレーライスは食塩の量が多いので控えましょう。

日常生活の注意

  1. 規則正しい生活をしましょう
    休養と睡眠を十分にとりましょう。
  2. 適正な体重を維持しましょう
    標準体重の算出方法
    標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
    (例)身長160cmの人の場合  1.6(m)×1.6(m)×22=56.32(kg)
  3. 便秘にならないように気をつけましょう
  4. 喫煙は控えましょう
  5. ストレスをなくすように心がけましょう
  6. 適度な運動を毎日続けましょう
    運動量は医師の指示を受けましょう。
  7. 急激な温度差に注意しましょう
  8. 定期的に血圧測定をしましょう
  9. 薬を医師に処方されている場合、勝手に中断することはやめましょう