食事療法のすすめ方 消化性潰瘍の食事

消化性潰瘍とは

胃・十二指腸の粘膜が、自分の胃酸や消化酵素(ペプシン)で消化されてできた傷を消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)と言います。

消化性潰瘍の原因

胃潰瘍の発生成因は、バランス説が有名です。胃酸・ペプシンおよびこれらの分泌を促進させる諸因子を攻撃因子と呼んでいます。これに対し粘膜や粘膜自体の防御作用、ホルモンによる胃酸分泌の抑制、豊富な血流などを胃粘膜防御因子と呼びます。この2つの因子のバランスが崩れて攻撃因子が優位になれば潰瘍が発生するという学説です。

胃潰瘍は主に防御因子の低下により、十二指腸潰瘍は攻撃因子の増強により起こります。
 
現在では、そのバランスを崩す最大の原因はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と言われていますが、ピロリ菌は50歳以上の日本人の70〜80%に感染していますので、潰瘍になるかどうかは生活習慣やストレスなど他の原因も関係します。
次に重要な原因は非ステロイド消炎鎮痛剤(痛み止め)などの薬剤です。 喫煙とストレスも原因になります。喫煙により粘膜血流が減少し、酸分泌が 亢進し攻撃因子を強めます。ストレスは、自立神経系を介して胃粘膜血流を低下させ、 やはり酸分泌を亢進します。

消化性潰瘍の症状

潰瘍の主な自覚症状は上腹部痛、心窩部(みぞおち)痛です。

胃潰瘍では食事後に痛みが起こり、一方、十二指腸潰瘍は空腹時痛が多く、食事を摂った後によくなる傾向があります。夜間就寝中に痛みが起こることもあります。これは空腹時、夜間にも強い胃酸分泌が起こるためです。
 
胃酸が多く出すぎる人では、吐き気や嘔吐、酸っぱい水があがってきたり、胸やけもみられます。この他上腹部不快感、もたれ感などの不定愁訴もありますが、高齢者では無症状の場合もあります。
 
潰瘍ができるとそこから出血する場合も少なくありません。慢性の出血の場合は貧血が起こり、急性の出血では吐血、下血、貧血、ショック等の症状が現れます。

消化性潰瘍の治療

昔から「酸のないところに潰瘍はできない」といわれたように、いかなる原因で発症した消化性潰瘍であっても、酸分泌を抑制することは治療効果があります。

(1)薬物療法 

潰瘍の治療は攻撃因子である胃酸の分泌を抑える薬(H 2ブロッカー・プロトンポンプ阻害薬)と粘膜を守る因子を強める薬(プロスタグランジン製剤)が使われます。潰瘍は薬で殆どの場合治癒しますが、薬の服用を中止するとまた再発することが多く、再発を防止するため薬を飲み続ける治療(維持療法)が行われてきました。ピロリ菌が潰瘍の主な原因であることが明らかになり、除菌治療により再発が劇的に減少することがわかりましたので、最近ではピロリ菌が陽性の潰瘍では除菌を行って再発を抑えるほうがよいと考えられています。

(2)食事療法 

消化性潰瘍の治療は強力な薬剤の出現で、厳しい食事制限は必要がなくなりましたが、不摂生な食生活やストレス、アルコールなどは、胃粘膜の抵抗力を低下させ、胃潰瘍を起こしやすくします。また胃潰瘍の治療と再発防止には食事療法や規則的な生活など生活の改善が必要です。

食事療法のポイント

1 食事は1日3食、規則正しくとりましょう

  • 規則正しい食習慣は生体内リズムを正常化し、消化管機能を適切に維持します。
  • 長時間の空腹は胃に食べ物が入ってこないので、胃液が濃くなり、胃粘膜障害を 起こしやすくします。

2 消化の良い食品を腹八分目に食べましょう。

  • 消化のよい食品とは、食物繊維や脂肪の少ない食品です。
  • 繊維の多いものや硬いものは胃壁を刺激し、胃酸分泌を促進するので控えましょう。
  • 肉は脂肪の少ないもの、魚は新鮮なものを選びましょう。
  • 食品はきざむ、おろす、よく煮るなどすると消化がよくなります。

3 食事はゆっくり・よくかんで食べ、食後は休養をとりましょう

4 熱すぎるものをすすったり、冷たいものを一気に飲み込んだりしないよう食べ方に注意しましょう

5 胃酸の分泌を高める食品は控えましょう

  • 甘味の強いもの
  • 食塩の多いもの
  • 酸味の強いもの
  • 肉汁などエキス分の多いもの
  • 香辛料の多いもの
  • アルコール飲料、炭酸飲料、コーヒー、紅茶、緑茶の濃いお茶類

6 脂肪を多く含んだものは避けましょう

適した食品・適した料理
食品名 適した食品 適した料理 注意したい食品・料理例
魚介類 白身魚(かれい・ひらめ・たら等)
はんぺん
煮魚・刺身・蒸し魚のあんかけ・
たらちり鍋・クリーム煮・はんぺんの卵とじ
干物・塩辛・いか・たこ
脂の多い魚(うなぎ等)
肉類 鶏肉(皮なし)
脂の少ない肉類のひき肉・薄切り
鶏ひき肉団子・鶏ささみのホイル焼
赤身肉のしゃぶしゃぶ
脂の多い肉・ハム・ベーコン
豚カツ・焼肉
卵類 鶏卵 半熟卵・卵豆腐・オムレツ
茶碗蒸・オムレツ
固ゆで卵
大豆製品 豆腐
納豆
冷奴(湯豆腐)・炒り豆腐
田楽
煮豆・枝豆
牛乳
乳製品
牛乳・ヨーグルト牛乳
チーズ・スキムミルク
クリームシチュー・グラタン
プリン
 
野菜類
果物
繊維の少ない野菜(ほうれん草・南瓜・人参等)
じゃがいも
バナナ・フルーツ缶
浸し・煮物 繊維が多く硬い野菜類(たけのこ・ごぼう・セロリ等)
きのこ類・海藻類
穀類 軟らかごはんうどん
パン・うどん
雑炊・トースト
煮込みうどん
炒飯・お茶漬け
菓子パン・中華麺類
スパゲッティー・盛りそば
油脂類 バター・マーガリン
マヨネーズ
バターやマーガリンをトーストにつける
温野菜のマヨネーズサラダ
ラード等動物油脂
フライ・天ぷら
1日の食事のとり方例
朝食 昼食 間食 夕食
軟らかごはん
みそ汁
オムレツ
皮むきトマト
お浸し
トースト
鶏肉のハンバーグ
人参甘煮
粉ふき芋
茹で野菜サラダ
牛乳
牛乳
果物
ビスケット
軟らかごはん
煮魚
奴豆腐
煮物
朝食 昼食 間食 夕食

日常生活の注意

薬物療法を行い、急性期を過ぎれば普通食に近いものでよく、厳格な食事療法は行わなくてもよくなりますが、以下のことに心がけた生活をしましょう。

  1. 暴飲・暴食は避けましょう
  2. 睡眠を十分にとり、疲労の蓄積を避けましょう
  3. 食事は楽しい雰囲気で食べることが大切です
  4. たばこは止めましょう
  5. 趣味やスポーツなどで気分転換をしましょう