食事療法のすすめ方 腎臓病の食事

腎臓とは

1 腎臓の病気

腎臓病と一口にいっても、原因や症状が違い、さまざまな病状を表します。

腎臓病の治療には安静、保温、薬物療法、食事療法が主体となります。病気の進行を抑えるには、食事療法が何よりも有効です。慢性腎炎や慢性腎不全の状態になっても、食事療法をきちんと続けていれば、健康な人と同じように生活ができます。更に悪化して人工透析に至った場合でも、食事療法は継続して行うことが必要です。

腎臓病の食事というと、食塩を減らすというイメージが強いのですが、それに加えて重要なのがたんぱく質の制限と、十分なエネルギーを摂ることです。

たんぱく質、エネルギー、食塩をどのくらいとれば良いのかは、一人ひとりの症状によって異なります。医師の指示量や管理栄養士の食事指導に従いましょう。

2 腎臓の仕組みと働き

腎臓はソラマメの形をした、縦12cm、横5~6cm、重さ150gほどの臓器で、お腹の中の背側で腰の上部に左右1個ずつあり、日々絶え間なく大量の血液が送り込まれています。

腎臓の主要な機能

  • 体内の老廃物の排泄
    腎臓は体内の老廃物を血液から濾し出して、尿として排出します。たんぱく質が体内で代謝・分解されてできた窒素化合物(尿素やクレアチニン、尿酸)、体内で行なわれる新陳代謝で生じた老廃物、体内に入った不要な薬物や毒物もみんな尿の中に溶けて排出されています。
  • 体液の恒常性の維持
    体内には水分やナトリウム、カルシウム、リン、カリウム、重炭酸イオンといった電解質が決まった割合で含まれていますが、この体の中の環境(内部環境)を常に一定に保つように、腎臓からの排泄量を調整しています。
  • ホルモンの産生
    血圧の調節や赤血球の成熟、骨の代謝に関連して骨粗しょう症を予防するビタミンDの代謝などに関与するさまざまなホルモンを産生しています。

3 腎臓病の症状

腎臓病の初期には、自覚症状がありません。肉眼的に尿の異常がわかるのもまれで、腎炎は10年以上にわたって無症状で経過します。定期的に尿検査を受けるようにしましょう。

慢性腎不全になると、体内の老廃物を尿中に排泄できなくなって血液中に有害な物質が多くなったり、逆に、体に必要な成分が尿中に排泄されたりします。また、水分や電解質・血圧の調節もできなくなり、むくみが現れたり血圧が高くなることもあります。赤血球の産生を刺激するホルモンであるエリスロポエチンが不足し、貧血を引き起こすこともあります。

治療を続けることで自覚症状は消えますが、進行すると腎臓の機能が回復しなくなり、ほとんど全身の臓器に異常をきたし、多彩な症状がでてきます。

4 腎機能検査

(1)尿検査

通常では尿中にほとんど排泄されないたんぱく質・血液・細胞などが漏れ出ていないかどうかを調べます(尿素窒素、クレアチニン、尿酸、カリウム、ナトリウム、血清タンパクなど)。腎不全の場合は特に、沈渣での赤血球や白血球、円柱細胞の量が重要視されています。

(2)クレアチニン・クリアランス(Ccr)

一定時間内に採取された血液と尿中のクレアチニンの量を測定し、腎臓から老廃物を濾し出す機能を調べます。

5 腎臓病の種類

(1)急性腎炎(急性糸球体腎炎)

  • 腎臓の糸球体内に急性の炎症変性を起こしている状態です。
  • 小児に多く発症しますが、成人にも見られます。
  • 急性扁桃腺炎や咽頭炎による発熱や咽頭痛が起こり、それが治ってから約10~15日後に発症することが多くあります。
  • 予後は良好で、80~90%は治りますが、一部に慢性腎炎などに移行することもありますので、早期発見が大切です。

(2)慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)

  • 急性糸球体腎炎の発症後、1年以上に渡って血尿やたんぱく尿などの異常尿所見や高血圧を維持するもの。
  • 明らかな急性糸球体腎炎の症状が見られなくても、異常尿所見が1年以上持続するもの。

(3)ネフローゼ症候群

  • 一つの疾患を指すのではなく、原因となる疾患が何であっても、高度のたんぱく尿と低たんぱく血症、高脂血症、浮腫などを呈する症候群をいいます。

(4)糖尿病性腎症

  • 糖尿病の代表的な合併症で、通常、5~10年以上の糖尿病歴ののちに発症します。
  • 尿中への微量アルブミンの出現から始まり、腎機能が徐々に低下して、やがては腎不全に至ります。
  • わが国では、透析療法に入る腎疾患の第一位であり、患者数の約4割を糖尿病患者が占めています。

(5)急性腎不全

  • 何らかの原因によって腎機能が急速に低下して腎臓での老廃物の排泄不全が一過性に起こり、血液中に急激にたんぱく質分解産物である尿素窒素(BUN)やクレアチニンが増加して、体内の恒常性を保つことができなくなった状態をいいます。
  • 適切な治療が行われれば治癒する可逆性(元の状態に戻る)の疾患です。

(6)慢性腎不全

  • 様々な腎疾患が不可逆的(元の状態に戻らない)に進行して腎臓の尿生成に関わる組織が減少し、徐々に体液組成の恒常性が維持できなくなった状態をいい、腎機能が回復する可能性は非常に難しくなってしまいます。
  • 数か月から数年かけて徐々に腎機能が障害され、50%以下の状態になります。初期は無症状ですが、進行すると腎機能低下に伴うさまざまな症状があらわれ、やがて末期腎不全(尿毒症)に至ります。
腎機能の分類
Seldinの分類 腎機能分類
(*注1)
BUN
血液尿素窒素
GFR
糸球体濾過率
Ccr
クレアチニン・クリアランス
腎機能正常 91ml/min以上
第1期 腎予備力減少期(腎予備能低下) ネフロンの約50%が破壊されているが、特に明らかな異常を認めない。腎の排泄及び調節能はよく保持されている。 尿素窒素の蓄積は無く無症状 50% 腎機能 71~90ml/min
腎機能中等度低下 51~70ml/min
第2期 代償性腎不全期(腎機能障害期) 普通では軽度の貧血がある。感染、手術、脱水により、容易に悪化し、腎の排泄及び調節能の異常像を呈する。 軽度の高窒素血症 50~30%
腎機能高度低下 31~50ml/min
第3期 非代償性腎不全期(腎不全期) 高度の高窒素血症、アシドーシス、低カルシウム血症、高リン血症、低ナトリウム血症をみる。軽度の高カリウム血症も出現。腎の濃縮及び希釈能障害も認める。貧血は高度。(狭義の慢性腎不全に相当) 尿素窒素の高度の上昇がみられる 30~10% 腎不全期 11~30ml/min
第4期 尿毒症期 腎の排出及び調節能の異常が更に著明となり、神経、筋、心血管系の諸症状が出現する。
(臨床症状が著しく、透析を必要とする時期)
尿素窒素の著明な上昇がみられる 10%以下 末期腎不全群(尿毒症期) 10ml/min以下~透析前

*注1 腎疾患の生活指導・食事療法ガイドラインより(社団法人 日本腎臓病学会編)


6 日常生活の注意

腎臓病の治療は安静、保温、薬物療法、食事療法が主体となります。

(1)規則正しい生活を心掛けましょう

寝たきりの安静をとる必要はありませんが、疲労を翌日まで残さないようにしましょう。旅行を計画する場合やスポーツに参加するときには、医師の指示を受けましょう。水泳や登山などの激しいスポーツは禁止します。

(2)仕事は1日8時間以内として残業や夜勤、長時間の立仕事、高温や温度差の激しい場所(特に寒冷)での作業には注意し、長すぎる通勤時間等は避けましょう
(3)風邪の予防に心掛けましょう

健康時に比べて全身の抵抗力が落ちています。人ごみを避け、外出後は手洗いやうがいをし、のどの痛み・咳・頭痛も軽く見ないで、早目に受診しましょう。

(4)薬を医師に処方されている場合、勝手に中断してはいけません

一度低下した腎臓の働きを回復させる薬はありませんが、症状を抑え合併症を防いで現状をできるだけ長く維持させるために、薬の作用をよく理解して、医師から処方されているものを指示通り飲むことが大切です。

(5)体重、血圧、飲水量と尿量を、日常的に測定するようにしましょう

自分自身を客観的にみることで、異常を早目に発見できます。

(6)測定の結果や、体の変化、自覚症状などを記録しましょう

受診時に医師に報告すると治療方針の参考にもなります。不安や疑問に思うことがあったら、よく相談しましょう。

(7)趣味やレクリエーション等を取り入れましょう 

自己管理を長く続けていく上では、日頃の注意とともに、生活を楽しくすることも大切です。