食事療法のすすめ方 貧血の食事


貧血とは

血液の働きで最も重要な仕事は、酸素を全身に運搬することです。この働きをつかさどるのは、血液中の赤血球にある血色素(ヘモグロビン)です。血液が酸素を運搬する能力は、ヘモグロビン量とほぼ比例します。
貧血とは赤血球あるいはヘモグロビンの量が正常より少なくなった状態で、その原因によって多くの種類に分けられます。
私たちの身体は酸素と栄養素をエネルギー源として生命を維持しているため、酸素の運搬が十分に行われなくなると、あらゆる組織が酸素不足になりさまざまな症状がでてきます。

貧血の主な症状

つかれやすい、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、頭痛、顔面蒼白、耳鳴りなどさまざまな症状が起こります。
しかし、緩やかに進行すると自覚症状を伴わないこともあります。

貧血の種類

1 鉄欠乏性貧血

ヘモグロビンの主な材料である鉄が不足し、ヘモグロビンが作られなくなるためにおこる貧血です。その原因は大きく4種類に分けられます。

  1. 鉄摂取量の不足
    欠食・偏食、無理なダイエット、外食・インスタント食品の多食などの食生活の乱れ等の原因により、鉄や栄養素が不足します。
  2. 鉄需要の増加
    妊娠・授乳期は胎児の成長や母乳分泌に鉄が多く必要になるため不足が起こりやすくなります。
    また、思春期女子では急激な成長により血液量が増加し、鉄の需要も増加して貧血になることがあります。
  3. 過剰な鉄損失
    月経(生理)過多や潰瘍、痔、ガンなどによる消化管からの出血が原因となります。男性の貧血の場合は、まず消化管出血を疑います。
  4. 吸収障害
    胃切除などにより胃酸の分泌が不足し、鉄の吸収が障害されます。

2 再生不良性貧血

血液をつくる骨髄の働きが低下するために起こる貧血です。赤血球を含むすべての血球が作られなくなる病気です。

3 悪性貧血(巨赤芽球貧血)

赤血球がつくられるときに必要なビタミンB12、葉酸が不足して赤血球が減少するためにおこる貧血です。

  1. ビタミンB12欠乏性
    ビタミンB12の吸収には胃液が必要ですが、胃切除のような場合には、胃酸分泌が低下し、吸収できなくなり欠乏が起こります。胃切除後およそ5年を経過すると体内に貯蔵されていたビタミンB12が枯渇して発症します。
  2. 葉酸欠乏性
    通常の食事をしていればほとんどおきませんが、極端な偏食や大酒飲みの人にみられます。

4 溶血性貧血

赤血球の寿命は約120日ですが、赤血球の膜がそれよりも早く壊れてヘモグロビンが流れ出しておこります。溶血性貧血の典型では皮膚や目が黄色くなるのが特徴です。
赤血球の膜が壊れる原因はいろいろありますが、マラソン選手や長距離歩行などのスポーツ選手に起きることがあることが知られています。


以上のように一口に貧血といっても、多種多様です。貧血をひとつの病気としてとらえるのではなく、さまざまな基礎疾患が原因となって起こるひとつの兆候としてとらえる必要があります。
貧血の中でもっとも多く見られるのが鉄欠乏性貧血で、貧血全体の60%〜80%を占めています。
鉄欠乏性貧血は食事とのかかわりも大きく、食事療法が有効な治療手段となっています。

貧血の診断

まず、貧血の有無を調べるため赤血球系の検査を行います。

  1. 赤血球数(RBC)  一定量の血液の中に含まれる赤血球の数を調べる検査
  2. ヘモグロビン濃度(Hb)  一定量の血液の中に含まれるヘモグロビンの濃度を調べる検査
  3. ヘマトクリット値(Ht)  一定量の血液の中に含まれる赤血球の容積の割合を調べる検査

これらの正常値を示します。

検査項目 単位 男性 女性
赤血球数(RBC)   104/μl   420〜547   365〜500
ヘモグロビン濃度(Hb)  g/dl  13.9〜16.8  12.0〜15.3
ヘマトクリット値(Ht)  %  41〜49.7  34.4〜46.0

このうち、通常はヘモグロビン濃度が低下した状態を貧血と考えます。成人では男性13g/dl、女性12g/dl以下がこれに相当します。高齢者では11g/dl以下を貧血と考えればよいでしょう。

健康診断で貧血と分かったら、さらに医療機関を受診してその種類と原因を探る必要があります。

食事療法のポイント

ここでは鉄欠乏性貧血の食事療法についてお示しします。
鉄欠乏性貧血の治療のため鉄剤が処方されることがあります。それによる治療効果がみられても、食事療法は根気よく続ける必要があります。

1 食事は1日3食規則正しく食べ、偏食・減食・欠食はなおしましょう

必要以上のダイエットや食事ぬき(特に朝食)が、思春期や若い女性の貧血の原因になっています。
インスタント食品の多用にも注意が必要です。

2 毎食、主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養素をバランスよくとるようにしましょう

主食・主菜・副菜
  • 主食   炭水化物を多く含む食品(ご飯・パン・めん類など)
  • 主菜  良質たんぱく質を多く含む食品(魚介類・肉類・卵・大豆製品・乳製品など)
  • 副菜  ビタミン・ミネラルを多く含む食品(野菜類・海そう類)

3 良質のたんぱく質を含む食品を選びましょう

たんぱく質は、血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となる大切な栄養素です。良質のたんぱく質を含む食品とは、魚介類、肉類、卵、大豆製品、乳製品などです。一度にたくさんとっても体の中に貯めておくことはできません。毎食食べるようにしましょう。

良質のたんぱく質

4 鉄分を十分にとりましょう

食物の鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は肉や魚介類の内臓や赤身などに多く含まれています。
非ヘム鉄は卵や乳製品などの動物性食品、大豆・野菜・海藻・穀類などの植物性食品に含まれています。
非ヘム鉄の吸収利用率はヘム鉄の1/10になりますが、肉や魚などの良質な動物性たんぱく質を同時に食べると、吸収率は高まります。

5 造血効果のあるビタミン類を十分にとりましょう

  • ビタミンCは、食品中の鉄が体で利用されるためになくてはならないものです。
    ビタミンCを多く含む新鮮な野菜や果物を一緒に食べることによって、非ヘム鉄の吸収率を高めることができます。

    非ヘム鉄の吸収率のページへ
  • ビタミンB12と葉酸は、正常な赤血球を作るために必要な栄養素です。

    ビタミンB12を多く含む食品 ・・・ 牛レバー、豚レバー、魚介類、貝類、卵黄、チーズなど
    葉酸を多く含む食品 ・・・ 牛レバー、豚レバー、卵黄、大豆、納豆、ほうれん草、ブロッコリーなど

    鉄分が多く含まれる料理例のページへ

鉄欠乏性貧血についてその他の注意

  1. 緑茶、コーヒー、紅茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げます。
    食事中や食後は渋いお茶やコーヒーを飲むのは控えましょう。
  2. 思春期・妊娠時・授乳期は、鉄需要が高まる時期なので鉄が多く必要です。
  3. 高齢者は、食事量の減少による鉄不足や、胃液分泌低下により鉄の吸収が悪くなりがちです。
    特に注意する必要があります。
  4. 鉄欠乏性貧血の原因として、食事以外の病気が潜んでいることがあります。
    たかが貧血と軽くみないで、きちんと医師の診断を仰ぎ、原因を探るようにしてください。

その他の貧血についての食事療法

ビタミンB12や葉酸欠乏による貧血の食事療法

偏食をなくし、バランスの良い食事を摂るようにしましょう。これらは偏食が無ければ通常は不足しない栄養素です。ただし、胃切除が原因で起きたビタミンB12欠乏の場合は食事療法の効果が期待できないため薬物療法が中心となります。また、葉酸欠乏症の場合は、バランスの良い食事をすれば簡単に改善します。