食事療法のすすめ方 肥満症の食事
肥満とは
肥満とは身体に過剰な脂肪が蓄積した状態のことをいいます。
肥満を解消する目的は、単にかっこよく・きれいにやせるという美容上のためばかりではなく、糖尿病や動脈硬化などいわゆる生活習慣病を予防することにあります。
肥満、特に「内臓脂肪型肥満」は「糖尿病(耐糖能異常)」や「高脂血症」「高血圧」と合併しやすく、この4つが揃った状態はメタボリックシンドローム(代謝異常症候群)といわれ、無自覚・無症状のうちに動脈硬化を促進し心筋梗塞などで死亡する可能性が一段と増加します。メタボリックシンドロームの中心となる肥満を解消することは、生活習慣病の予防に直結します。
肥満を解消するということは身体に蓄積した過剰な脂肪を減らしていくということですから、極端なダイエットで体重が一時的に急激に落ちたとしても、身体の筋肉や水分が減少しているのでは意味がありません。正しい食事療法と運動療法を組み合わせ、体脂肪を減少させていくことが重要です。
減量のペースは一ヶ月に最大でも4kg、平均2kg前後の減量であれば無理がありません。体脂肪1kgは7,200kcalに相当しますから、一ヶ月に2kg減量するためには現状より14,400kcalのエネルギーを減ずる必要があり、一日あたりでは約480kcalを減らすことになります。通常は、このうち200kcal程度を運動で消費することが望ましいです。
肥満の判定と標準体重
肥満かどうかは身長・体重からBMI(体格指数:body mass index)を求め、判定します。
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
(例)身長160cm体重68kgの場合のBMIは、
68÷(1.6×1.6)=26.6となり、下記の判定基準により肥満と判定されます。
男女ともBMIが22のときもっとも疾病が少ないことから、世界的にこの値を用いて標準体重が求められます。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
(例)身長160cmの場合の標準体重は、
1.6×1.6×22=56.3kg となります。
標準体重と実測体重から肥満度が求められます。肥満度15%以上は肥満と判定されます。
肥満度(%)=(実測体重−標準体重)÷標準体重×100
日本肥満学会による肥満の判定基準(1999.10新基準)
| 判定 | やせ | 普通 | 肥満(1度) | 肥満(2度) | 肥満(3度) | 肥満(4度) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| BMI | 18.5未満 | 18.5〜25 | 25〜30 | 30〜35 | 35〜40 | 40以上 |
| 肥満度 | -15%未満 | -15%〜15% | ||||
肥満の種類
肥満は、お腹から上に脂肪のたまる上半身肥満とお腹から下に脂肪のたまる下半身肥満とにわけられます。
上半身肥満はさらに内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられます。
内臓脂肪型肥満とは、脂肪が腹腔内に蓄積した状態で、皮下脂肪型肥満は、皮下に脂肪が蓄積する状態です。この中で、生活習慣病を引き起こすのは、内臓脂肪型肥満です。
男性でウェスト周囲径が85cm以上、女性で90cm以上になると内臓脂肪型肥満の可能性が疑われます。皮下脂肪は燃焼しにくく減らすのに苦労しますが、病気にはあまり関連性がないといわれています。内臓脂肪は生活習慣病を引き起こしやすい反面、食事療法や運動療法にすぐ反応し減量しやすいという特徴があります。
食事療法のポイント
1 食事で摂取するエネルギー量をコントロールしましょう
- 消費エネルギーより摂取エネルギーを小さくすることで、体脂肪の減量を図ります。
- 医師から摂取エネルギー量を指示された方は、指示されたエネルギー量を守りましょう。
- 摂取エネルギー量の設定は肥満度、性別、年齢、合併症の有無、日常生活やスポーツによる身体活動量などによって決められます。一般的には標準体重あたり一日25〜30kcalの範囲で設定します。極端に食事量を減らすとリバウンドが起こりやすくなります。
(例)身長160cmの場合(体重1kg当たり25kcalとすると)
標準体重=1.6×1.6×22=56.3kg
56.3×25=1400kcal(一日分)
2 栄養のバランスが偏らないようにしましょう
肥満の解消のためには摂取エネルギー量をコントロールしますが、各栄養素の必要量はきちんと確保することが重要です。毎食「主食・主菜・副菜」をそろえるよう心がけることで、バランスを保ちましょう。
- 主食(炭水化物を多く含む食品)
炭水化物は脳や神経系のエネルギー補給のために必要です。
極端に炭水化物を制限すると、血糖コントロールがうまくいかずに低血糖になったり、脂肪がエネルギー源として大量に動員されてケトン体という物質に変わり、「ケトーシス」という状態になってしまうことがあります。また体内のたんぱく質が、エネルギー源として使われてしまいます。
ごはん・パン・うどんといった主食は毎食量を決めてとるようにしましょう。 - 主菜(良質たんぱく質をを多く含む食品)
体を作るもとになります。私たちの体の約20%はたんぱく質で、これを保持するためにも毎日たんぱく質をとる必要があります。
良質たんぱく質を含む魚・肉・卵・大豆製品などでつくる「主菜」を毎食きちんととりましょう。 - 副菜(ビタミン・ミネラル・食物せんいを多く含む食品)
ビタミンやミネラルは微量栄養素といわれています。体の中で作ることができないので、食事から十分確保する必要があります。食物せんいは胃の中にとどまっている時間が長いことから空腹感を和らげたり、炭水化物や脂肪の吸収をゆるやかにする働きがあります。野菜類は毎食積極的にとりましょう。海そう・きのこ・こんにゃくといった低エネルギーの食品も上手に利用しましょう。
食品の選び方と調理のポイント
- 肉は脂の少ないものをえらびましょう
- エネルギー量の低いこんにゃく・きのこ類・海そうなどを上手につかいましょう。
- 市販の惣菜やインスタント食品などにはエネルギーの高いものがたくさんあります。内容を確かめてから使いましょう
- 油の多い中華・洋風料理より、和風料理にしましょう
- 天ぷら・フライなど揚げ物は衣に油が多く含まれ、エネルギーが高くなりがちです。量や食べる頻度に気をつけましょう
- テフロン加工のフライパンや、ノンオイルドレッシングを使用するなどして、油を使う量を減らしましょう
- 味付けが濃いと、ついついごはんを食べ過ぎてしまいます。薄味にして、香辛料も控えめにしましょう
- 切り方や盛り付けでかさを多く見せる工夫をしましょう
お役立ちレシピ ~野菜でボリュームアップ~
日常生活の注意
生理的な空腹感よりもストレスや習慣といった外的な因子によって食べ物に手が出てしまうことも多くあります。自分の行動に問題がないか分析・認識し、行動を修正していくことが重要です。
1 一口ずつゆっくりよく噛んで食べましょう
- 満腹感を感じるまでには時間がかかります。早食いすると満腹感を覚える前に不必要に食べ過ぎてしまいます。
2 間食は太る原因になるので、できるだけ控えましょう
- どうしても空腹を我慢できない場合は、甘い菓子類よりは、果物を食べることをおすすめします。
果物は水分や食物せんいが豊富なのでエネルギー量が少なくても満足感が得られます。
ただし、量的には1日当りの果物摂取の目安量※の範囲から充てるようにしてください。
※ 1日当りの果物摂取の目安量・・・みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本 - 夕食後は食品にかかわらず食べないようにしましょう。
3 炭酸飲料や砂糖入りの飲み物は控えましょう
- 砂糖のとりすぎは、太る原因になります。飲み物はお茶類などのエネルギーがないものにしましょう
4 目につくところや手の届くところに食べ物を置かないようにしましょう
- 不必要に買いだめをしないようにしましょう。
- 空腹時の買い物は避け、食べ物はおなかのすいていないときに買い物するよう心がけましょう。
5 活動量を増やしましょう
- 運動だけで減量することには無理があります。食事療法と併用すると効果があります。
- 運動療法を実施しても問題がないか、必ず医師にチェックしてもらってからはじめましょう。
- 肥満の解消にもっとも効果的な運動は、酸素を十分に取り入れて行う中程度の強さの運動、いわゆる有酸素運動です。具体的にはウォーキング、ゆっくりめのジョギング、サイクリング、水泳などを、持続して行うものです。
- 息をこらえて行う無酸素運動は、有酸素運動のように脂肪を効率よく消費はしませんが、ダンベルやチューブトレーニングなどをとりいれて筋肉量を増やすと基礎代謝が高まり、さらに効率よくエネルギーを消費しやすい身体になります。
食品のエネルギー量と消費に要する運動量(参考:日本人の栄養所要量食事摂取基準の活用)
| エネルギー量 | 100kcal | 160kcal | 250kcal |
|---|---|---|---|
| 食品例 | 缶コーヒー1本 | 大福もち 1個 |
|
| 運動(60kg男性) | 急ぎ歩き 30分 普通の歩行 45分 ゆっくりした歩行 45分 ラジオ体操 30分 自転車(普通の速さ) 40分 |
ゆっくり水泳20分 サイクリング(時速10km) 50分 |
エアロビックダンス 60分 ゴルフ(丘陵) 50分 |
6 「ながら食い」はやめましょう
- テレビを見ながら、新聞を読みながらなど、別の行動をしながら食べると無意識に食べ過ぎてしまいます。
7 普段の食習慣に問題がないか、自分でチェックしてみましょう
- 食事の記録(食事日記)をつけてみましょう。いつ、だれと、なにを、どのくらい食べたかを毎日食事のたびに記録してみます。
次に記録を分析して、自分の食行動のどこが問題なのかを明らかにしていきます。
問題点がはっきりしたら、不適切な行動を修正して望ましい食行動を習慣づけるようにしていきましょう。