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都立病院だより 第5号

平成17年12月発行

東京発 医療改革

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特集:インフルエンザの基礎知識

角田隆文医師
 

風邪やインフルエンザが流行する季節になりました。新聞紙上では、新型インフルエンザや鳥インフルエンザについての報道が多く見られます。そこで、今回は、都立荏原病院感染症科部長の角田隆文医師にインフルエンザについて聞きました。

Q1.インフルエンザはいわゆる風邪とは違うのですか?

A1.

かぜは風邪(ふうじゃ)という邪気によって体調を崩すという意味だそうですが、インフルエンザはもっと重い病気です。
普通のかぜの症状は、くしゃみ、鼻汁、のどの痛み、咳が中心で、全身症状はあまりみられません。インフルエンザでは、突然の高熱(38度以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状に始まり、あわせてかぜ症状があります。解熱鎮痛剤を主体とした一般のかぜ薬が症状を軽減することから、「かぜ薬が効いた」と誤解されますが、現在は皆さんご存知のとおり、インフルエンザの治療薬により早期に回復することが可能です。
そもそも、かぜの病原体とインフルエンザの病原体の違いがわかれば、異なった対策をとるべきことに、ご理解をいただけるのではないでしょうか。
かぜは主に接触感染といって、手に付いた病原体が自分の口や鼻に触れることで感染します。鼻やのどの奥で増殖しますが、多くは3~4日で治ります。一方、インフルエンザは、咳やくしゃみで飛沫となって空気中に飛散します。その結果、同時に多くの人が罹患する流行の形をとります。人混みにいけばもらってしまう可能性が高くなります。さらに、かぜのウイルスに比べその増殖力が激しく、感染に対するからだの防御反応が、全身症状となります。かぜが局地戦であることに対し、全面戦争となるわけです。
高齢者や呼吸器・循環器に慢性の病気をお持ちの方は、重症化することが多く、小児では急性脳症をおこして死亡することもあります。

Q2.どうして冬になると流行するのですか?

A2.
身近な予防法
 

インフルエンザは冬の病気(11月から4月に流行)ですが、寒さではなく乾燥が大きな因子とされています。これは、のどの粘膜が乾燥により損傷してしまうことが原因です。したがって、かぜを引いたらマスクをするのではなく、インフルエンザをもらわないようにマスクをするわけです。当然かぜを引いているときにはインフルエンザにかかりやすくなっていますので、よりいっそうの注意が肝要です。のどの乾燥を防ぐためには、寝ているときにもマスクをしていて欲しいところですが、家の中では加湿器などを上手に使って湿度50%を目指しましょう。

Q3.インフルエンザには、いくつか種類があるそうですが、今シーズンの流行は何でしょうか?

A3.

インフルエンザはスペイン風邪の病原体を調べた結果見つかったウイルスです。インフルエンザにはA型、B型、C型がありますが、流行するのはA型とB型です。A型の中にも何種類ものタイプがあって、ひと冬に何種類ものインフルエンザにかかってしまう人もいます。現在流行しているのは、A/ソ連型(H1N1亜型)とA/香港型(H3N2亜型)とB型です。ソ連かぜとか香港かぜと呼んでいましたね。それぞれの型でも少しずつ形を変えていくために、去年かかったのに今年もかかったということがあります。
毎年インフルエンザワクチンの予防接種をなさっている方もいらっしゃると思いますが、これは半年前に南半球で流行したインフルエンザを対象にしたワクチンです。ときに予想が外れることもあり、大きく変異したために有効でないということもありますが、インフルエンザワクチンは感染防止のワクチンではなく、かかったときの重症化防止のワクチンですので、かかったときの症状の重さを考えれば、お勧めすべきものですね。

ワクチンの効果
予防接種を受けていない人が受けたと仮定したときの死亡者数
予防接種を受けていない人が受けたと仮定したときの死亡者数(65歳以上)
(厚生労働省研究班データ 1997-1999)

65歳以上の高齢者の場合、インフルエンザワクチンの接種を受ければ、死亡者数を約80%減らすことができると考えられています。

Q4.医療機関での検査や治療方法について教えてください。

A4.
治療方法イメージ
 

ウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザ薬の登場により、全く治療法が変わりました。発病後48時間以内に服用を開始すれば、早く治るというものです。そのために、綿棒を鼻に差し込んでインフルエンザウイルスを判定する検査が導入されています。少し痛いのですが、かぜとは対応が異なることから我慢してください。ただし、発病後6時間では検査上、陽性にならないことがあります。また、100%反応する検査ではないので、結果が陰性でもインフルエンザではないとは言えません。このあたりが難しいところです。
「タミフルTM」による副作用で死亡したとの報道がなされていますが、もともとインフルエンザが死に至ることもある病気ですので判断は難しいと思います。その他吸入薬の「リレンザTM」とA型に対応する「シンメトレルTM」とがあります。いずれも薬局では購入できませんので、医療機関を受診してください。


Q5.新聞やニュースなで新型インフルエンザの報道をよく見かけ、心配です。これまでのインフルエンザと こが違うのでしょうか?

A5.

今までの抗原性と全く異なるインフルエンザに対して新型と名付けています。香港かぜもかつては新型だったわけです。スペイン風邪では全世界で2000万人が死亡したと伝えられています。初めての流行時にはワクチンもありません。そして今、トリにおいて新しいインフルエンザが拡がっています。しかもそれは今までヒトが経験したことがないトリインフルエンザの中でも病原性が高いものです。トリ同様にヒトにも高病原性であるかどうかまだ確かなことは分かりませんが、初めて流行前に察知できたといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、これまでのスペイン風邪の流行したときと決定的に違うのは、食糧事情ではないかと考えています。食事をおろそかにしている人は、もしかすると過去の経験を繰り返してしまうかもしれませんが、衛生状況や個人の体力も当時とは全く異なっていると思います。罹患しても多くのものが乗り切れるのではないかと思いますし、インフルエンザに続く肺炎などの治療手段も格段に違います。
新型インフルエンザについては、国内で発生するというよりも、まずは国外からの侵入を予想しています。したがって当初は水際作戦ですね。社会的要請から帰国発病者を隔離することになるかもしれません。国民の一人ひとりが、インフルエンザによる社会的損失を鑑みて行動していただけるように願っています。